国立大学法人 岡山大学

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植物の鉄蓄積調節を担う短鎖ペプチドFEP1の機能を明らかに

2022年09月12日

岡山大学
長崎大学


◆発表のポイント

  • シロイヌナズナ短鎖ペプチドFEP1の鉄恒常性維持での生理的機能を明らかにしました。
  • FEP1は植物の組織間の物質輸送や分配で重要な役割を果たす維管束組織の鉄恒常性維持に関わります。
  • 研究が進むことで、作物の鉄吸収・蓄積能力の調節を通して食糧の鉄成分の担保・維持に貢献すると期待されます。

 岡山大学資源植物科学研究所の平山隆志教授と馬建鋒教授、理化学研究所環境資源科学研究センターの持田恵一チームリーダー(長崎大学情報データ科学部 教授、横浜市立大学院生命ナノシステム研究科 客員教授)らの共同研究グループは、植物の鉄欠乏応答で重要な役割を担う短鎖ペプチドFEP1/IMA3の機能を明らかにしました。
 本研究成果は、8月22日、英国の植物科学雑誌「Plant Cell & Environment」のOriginal Articleとして掲載されました。
 生物にとって鉄はなくてはならないミネラルのひとつです。鉄は使いにくい不溶性の状態で土壌に多く含まれていますが、植物は独自の方法でこれを可溶化して取り込み利用しています。一方、鉄は多すぎると有害なので、鉄の取り込み、分配、維持は厳密に調節されていると考えられています。平山教授らは、2018年に、植物の鉄欠乏応答で重要な役割を担う短鎖ペプチドFEP1を発見し報告しました。今回の研究では、このFEP1が植物の物質の輸送・分配に関わる維管束組織の鉄の取り込みや分配で重要な役割を担っていることを、網羅的遺伝子発現解析や生理学的解析から明らかにしました。本研究成果は、作物の鉄吸収能力の向上を可能にし、さらにヒトの鉄摂取不足の解決につながると期待されます。

◆研究者からひとこと

鉄を含め、ミネラルの分配の調節機構は組織ごとに異なるうえに、変異や遺伝子発現による2次的3次的な影響もあり非常に複雑で、データの解釈には大変苦労しました。研究に携わった研究者の技術と努力により、納得できる結論が導き出されたことは大変良かったと思います。FEP1に関してはまだまだ解明しなくてはならないことが多いのですが、未知の部分に切り込む楽しさは格別です。
平山教授

■論文情報
論 文 名:FE UPTAKE INDUCING PEPTIDE1 maintains Fe translocation by controlling Fe deficiency response genes in the vascular tissue of Arabidopsis
掲 載 紙:Plant Cell & Environment
著  者:Satoshi Okada, Gui Jie Lei, Naoki Yamaji, Sheng Huang, Jian Feng Ma, Keiichi Mochida, Takashi Hirayama
D O I:10.1111/pce.14424
U R L:https://doi.org/10.1111/pce.14424

■研究資金
 本研究は、「科学研究費助成事業」(挑戦的萌芽研究 19K22434、基盤研究B 21H02509,特別推進研究16H06296基盤研究S 21H05034)、「科学技術振興機構」(CREST JPMJCR16O4)、「生物系特定産業技術研究支援センター」(ムーンショット JPJ009237)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
植物の鉄蓄積調節を担う短鎖ペプチドFEP1の機能を明らかに


<お問い合わせ>
岡山大学 資源植物科学研究所 教授 平山 隆志
(電話番号)086-434-1213

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