国立大学法人 岡山大学

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熱帯夜による睡眠障害の被害は熱中症に匹敵することが判明

2022年09月27日

東京大学
岡山大学
関西福祉科学大学

◆発表のポイント

  • 毎日の睡眠の質を計測する自記式質問票を開発し、日本の夏の都市部における住民の睡眠の質を調査しました。その結果、日最低気温が25℃を上回ると睡眠は悪化し、睡眠障害の被害(健康ロス)は、熱中症の死亡(死亡ロス)に匹敵することがわかりました。
  • 死亡ロスと健康ロスを一つの指標で扱える障害調整生存年(DALY)で、熱帯夜による睡眠障害を定量化したのは、世界で初めてです。
  • 死亡数や救急搬送数といった統計が存在しない熱帯夜による睡眠障害の被害が定量化され、熱中症の死亡ロスに匹敵することが明らかになったことで、夜の暑さについても対策の必要性が認識されることが期待されます。

 東京大学大学院新領域創成科学研究科の井原智彦准教授、岡山大学の鳴海大典教授、関西福祉科学大学の福田早苗教授、産業技術総合研究所の近藤裕昭客員研究員、玄地裕研究部門長の研究グループは、障害調整生存年(disability-weighted life year:DALY)での評価が可能となるような、毎日の睡眠の質を計測する自記式質問票と回答結果の解析手法を開発しました。その上で、夏の名古屋市民の睡眠を調査・解析したところ、日最低気温が25℃を上回ると睡眠は悪化し、その被害は熱中症の死亡に匹敵することがわかりました。
 熱帯夜による睡眠の悪化は、さまざまな方法で明らかにされてきましたが、熱中症のような他の被害と比較できない指標で評価されていたため、健康被害としての実態がわかっていませんでした。
 今回開発した質問票と解析手法を用いることにより、熱帯夜による睡眠障害の実態の把握が進むとともに、夜の暑さについても対策の導入が進むことが期待されます。将来的には、世界の睡眠障害の実態の把握や、対策の導入効果の分析などにも応用する予定です。
 本研究成果は、日本睡眠学会英文論文誌「Sleep and Biological Rhythms」(2022年9月24日)に掲載されました。

■論文情報
雑誌名:「Sleep and Biological Rhythms」(オンライン版:9月24日)
論文タイトル:Loss of disability-adjusted life years due to sleep disturbance caused by climate change
著者:Tomohiko Ihara*, Daisuke Narumi, Sanae Fukuda, Hiroaki Kondo, Yutaka Genchi
DOI番号:https://doi.org/10.1007/s41105-022-00419-z
アブストラクトURL:https://link.springer.com/article/10.1007/s41105-022-00419-z

■研究資金等
 本研究は、科研費「基盤研究(B)(課題番号:23360437)」、「基盤研究(B)(課題番号:20H03949)」、「国際共同研究強化(B)(課題番号18KK0123)」、文部科学省気候変動適応研究プログラム、環境再生保全機構環境研究・技術開発基金(S-14)の支援により実施されました。

■発表者:
井原 智彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻 准教授)
鳴海 大典(岡山大学学術研究院環境生命科学学域 教授)
福田 早苗(関西福祉科学大学健康福祉学部健康科学科 教授)
近藤 裕昭(産業技術総合研究所環境創生研究部門 客員研究員)
玄地 裕 (産業技術総合研究所安全科学研究部門 研究部門長)

※本プレスリリースの図1と図2は原論文「Loss of disability-adjusted life years due to sleep disturbance caused by climate change」の図を引用・改変したものを使用しています。

<詳しい研究内容について>
熱帯夜による睡眠障害の被害は熱中症に匹敵することが判明


<本件お問い合わせ先>
<研究に関すること>
東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻 准教授
井原 智彦(いはら ともひこ)

岡山大学学術研究院環境生命科学学域 教授
鳴海 大典(なるみ だいすけ)

<報道に関すること>
東京大学大学院新領域創成科学研究科 広報室
Tel:04-7136-5450

岡山大学総務・企画部広報課
Tel:086-251-7292

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