国立大学法人 岡山大学

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特発性多中心性キャッスルマン病の治療効果を予測可能なサブタイプを確立!

2022年09月29日

◆発表のポイント

  • 特発性多中心性キャッスルマン病は、全身のリンパ節が腫れ、発熱や倦怠感等の全身症状を引き起こす指定難病です。
  • 特この病気は、症状の特異性に乏しく診断に有用なバイオマーカーが存在しないため、臨床経過や治療反応性が異なるものが混在している点が問題となっています。
  • 特発性多中心性キャッスルマン病において、特徴的な病理所見と緩徐な臨床経過、良好な治療反応性を示す独立したサブタイプが存在することを明らかにし、世界に示しました。

 岡山大学大学院保健学研究科の錦織亜沙美大学院生、岡山大学病院病理診断科の西村 碧フィリーズ医師、学術研究院保健学域の佐藤康晴教授らの研究グループは、特発性多中心性キャッスルマン病におけるサブタイプの確立について検証しました。本研究成果は9月7日、「International Journal of Molecular Sciences」に公開されました。
 特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD)は、全身のリンパ節の腫れや、発熱、貧血、倦怠感等の全身症状を引き起こす疾患です。この病気は、顕微鏡で観察した際の特徴的な組織像により定義されています。しかし、iMCDは稀な疾患であり、特異的な臨床症状は無く明確な診断基準が確立されていないことから、診断および治療を巡る混乱が生じています。また、iMCDの治療法として日本では抗IL-6受容体抗体が承認されていますが、あくまで対症療法となります。さらに、iMCDの中でも治療に対する反応性にばらつきがあることが問題となっています。
 本研究では、iMCDの組織像や臨床像、治療反応性を解析し、iMCDの中に特徴的な病理所見と緩徐な臨床経過および良好な治療反応性を示す独立したサブタイプが存在することを明らかにしました。この結果、今後iMCDにおける診断や治療方法の選択に役立つことが期待されます。

◆研究者からひとこと

iMCDは未だ不明な点が多い疾患ですが、本研究で検証したサブタイプが広まり、今後の診断・治療に役立つことを期待しています。
また、本研究は「岡山大学科学技術イノベーション創出フェローシップ」の多大な支援を頂きました。本年10月1日からは岡山大学・助教としてさらに発展的な研究活動を行いたいと思います。

錦織大学院生
本研究により、iMCDの中に、より均一な臨床組織学的特徴を示し
抗IL-6受容体抗体がよく効く亜型があることが世界的に示されました。本研究が、適切な治療選択の足がかりになればと思います。
本年10月1日からは岡山大学・講師として一層気を引き締め進んでいきたいと思います。

西村医師

■論文情報
論 文 名:Idiopathic Plasmacytic Lymphadenopathy Forms an Independent Subtype of Idiopathic Multicentric Castleman Disease.
掲 載 紙:International Journal of Molecular Sciences
著  者:Nishikori A, Nishimura MF, Nishimura Y, Otsuka F, Maehama K, Ohsawa K, Momose S,Nakamura N, Sato Y.
D O I:https://doi.org/10.3390/ijms231810301
U R L:https://www.mdpi.com/1422-0067/23/18/10301

■研究資金
本研究は、科学研究費補助金(20K07407)およびJST 科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業(JPMJFS2128)の支援を受けて実施しました。

■参考
錦織亜沙美大学院生は、「岡山大学科学技術イノベーション創出フェローシップ(通称:OU フェローシップ)タイプA」の認定者であり、今後の活躍が期待されています。

<詳しい研究内容について>
特発性多中心性キャッスルマン病の治療効果を予測可能なサブタイプを確立!


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院保健学域 分子血液病理学
教授 佐藤 康晴
(電話番号)086-235-6896
(FAX)086-235-7156

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