国立大学法人 岡山大学

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鑑真和上がもたらした漢方薬が現代日本の体系化された漢方薬処方の源流!

2022年10月28日

◆発表のポイント

  • 奈良時代に唐から来日した鑑真和上は日本に戒律を伝えるとともに、漢方薬をもたらしました。
  • 984年(平安時代)に編纂された現存する日本最古の医学書「医心方」に鑑真和上がもたらした漢方処方の一部は収載されていますが全容は不明でした。
  • 劉詩卉博士が見つけた現代中国の廃版書籍「三宝問世(鑑真秘伝三宝)」に鑑真和上が日本にもたらした漢方薬の全容が記載されており、その著者「雷雨田」は、鑑真和上が日本にもたらした漢方薬と同じセットの現物(鑑上人密方)を代々受け継いできた52世です。
  • 現代日本で健康保険の中で承認されている漢方薬は、鑑真和上がもたらした漢方薬に源流があることを改めて示しています。

 岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域(医)生体機能再生再建医学分野(眼科)の松尾俊彦教授、劉詩卉特任助教(現在は上海交通大学医学院眼科医師)、同大学院ヘルスシステム統合科学研究科の松尾智江客員研究員、同学術研究院医歯薬学域(薬)精密有機合成化学分野の阿部匠講師は、奈良時代に鑑真和上が唐から日本にもたらした漢方薬の詳細を明らかにして、その漢方薬についての総説を発表しました。世界に類を見ない日本の特徴として、現代日本では同じ保険診療でいわゆる西洋薬と漢方薬を同時に処方することができます。また、一般用医薬品として漢方薬を薬局で購入することもできます。日本のこのように整理され体系化された漢方処方の源流は、鑑真和上がもたらした漢方薬にあることが分かります。
 本研究成果は、2022年10月11日、スイスの化合物専門誌「Compounds」に掲載されました。
 今後、漢方薬の中から新たに有用な成分がみつかり新薬が開発されていくことが期待されます。

◆研究者からひとこと

現在は上海交通大学医学院の眼科医として勤務する劉詩卉(Liu Shihui)博士が岡山大学在任中に探し出した研究テーマです。劉さんは鑑真和上と同じ中国揚州の出身で、その縁で鑑真和上の漢方薬に興味を持ち、鑑真の漢方処方の現物を代々受け継ぐ方と連絡を取り、廃版書籍を手に入れました。そこには鑑真和上のもたらした漢方薬が記載され、現代日本の漢方薬とほぼ同じであることが分かり驚きました。薬学部の有機化学の専門家の阿部匠先生と共同で総説を発表でき、今後の研究展開が楽しみです劉詩卉博士

松尾 教授

阿部 講師

■論文情報
論文名: Traditional Chinese Medicines and Prescriptions Brought from China to Japan by a Monk (Jianzhen, Japanese: Ganjin) : A Historical Review
掲載誌: Compounds 2022;2:267-284.
著者: Shihui Liu, Toshihiko Matsuo, Chie Matsuo, Takumi Abe
D O I : doi.org/10.3390/compounds2040022 (registering DOI)
U R L: https://www.mdpi.com/2673-6918/2/4/22

<詳しい研究内容について>
鑑真和上がもたらした漢方薬が現代日本の体系化された漢方薬処方の源流!


<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院 ヘルスシステム統合科学学域(医)
(岡山大学病院眼科)
教授 松尾 俊彦

岡山大学 学術研究院 医歯薬学域(薬)
 講師 阿部 匠

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