国立大学法人 岡山大学

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原生生物有中心粒太陽虫における生物界最速の細胞運動機構の解明~細胞の屋台骨「微小管」が一瞬で消失してしまう謎?~

2022年12月22日

◆発表のポイント

  • 原生生物有中心粒太陽虫の軸足と呼ばれる仮足がほんの一瞬(数十ミリ秒以下)で消失してしまう細胞運動機構に関係する候補遺伝子群を明らかにしました。
  • その仮足は細胞骨格となるチューブリンタンパク質から構成される微小管を内包します。微小管はあらゆる生物の細胞運動を担っており、その機能喪失は生物にとっては致命的となります。
  • 生物界最速の細胞運動機構の仕組みを解明することで、太陽虫の軸足長の変化を指標とした新規薬剤の一次スクリーニングや環境水のモニタリング装置の開発にも繋がります。

 岡山大学学術研究院教育学域(生命科学領域)の安藤元紀教授と大学院環境生命科学研究科博士課程修了の池田理佐氏(博士、現清心女子高等学校教諭)の研究グループは、微小管が関与する細胞運動機構の中でも最も速い反応速度を示す原生生物の一種である有中心粒太陽虫Raphidocystis contractilisの軸足(仮足)収縮機構に関わる候補遺伝子群を初めて明らかにしました。
 太陽虫と呼ばれる一群の原生生物(真核生物)は、細胞体表面から軸足と呼ばれる仮足を放射状に伸ばし(その名の由来)、各々の仮足は細胞骨格としてチューブリン分子から構成される微小管を内包しています。太陽虫は仮足の長さ(微小管の重合・脱重合)を調節し多様な細胞運動を行います。本研究で着目した軸足の急速な短縮現象は一般的な微小管の脱重合速度の1,000倍以上の速さで起こり、その仕組みは未だ解明されていません。本研究では非モデル生物である太陽虫のde novoトランスクリプトーム解析による微小管関連遺伝子の網羅的解析を行い、軸足収縮に関与する候補遺伝子の一群を明らかにしました。微小管系運動機構で研究の進んでいる鞭毛・繊毛運動と太陽虫の軸足運動とは、遺伝的な背景を含めて大きな違いがあることも分かってきました。
 研究成果は11月21日、国際誌「Journal of Eukaryotic Microbiology」(Wiley)の電子版に掲載されました。生物界最速の細胞運動機構の解明により応用研究への道筋もできつつあります。

◆研究者からひとこと

最近、岡山県内の様々な水圏から多種多様な太陽虫類が続々と見つかっています。とある歴史のある池からは複数種の太陽虫が同じ環境で生息していることも明らかとなり、形態学的には太陽虫に分類されるものの遺伝子レベルの解析では大分異なることも分かってきました。たまたま太陽の形になったのか?謎は深まるばかり。調査の範囲を徐々に広げています!
安藤 教授

■論文情報
論 文 名:De novo transcriptome analysis of the centrohelid Raphidocystis contractilis to identify genes involved in microtubule-based motility.
掲 載 紙:Journal of Eukaryotic Microbiology
著  者:Risa Ikeda, Tosuke Sakagami, Mayuko Hamada, Tatsuya Sakamoto, Toshimitsu Hatabu,Noboru Saito, Motonori Ando
D O I:10.1111/jeu.129551
U R L:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/jeu.12955


<詳しい研究内容について>
原生生物有中心粒太陽虫における生物界最速の細胞運動機構の解明~細胞の屋台骨「微小管」が一瞬で消失してしまう謎?~


<お問い合わせ>
学術研究院教育学域(生命科学領域)
教授 安藤 元紀
(電話番号)086-251-7753
(FAX)086-251-7755
(URL)https://edu.okayama-u.ac.jp/~rika/cell_physiology/index.html

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