国立大学法人 岡山大学

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脳内のアルツハイマー病変を早期検出する血液バイオマーカーの産生機構を解明

2023年02月01日

東京大学
岡山大学
科学技術振興機構(JST)

1.発表者:
富田 泰輔(東京大学大学院薬学系研究科 薬学専攻 教授)
横山 雅シャラ(東京大学大学院薬学系研究科 薬科学専攻 博士課程)
松崎 将也(東京大学大学院薬学系研究科 薬学専攻 博士課程(研究当時))
金子 直樹(島津製作所田中耕一記念質量分析研究所 係長)
田中 耕一(島津製作所田中耕一記念質量分析研究所 所長/エグゼクティブリサーチフェロー)
廣畑 聡(岡山大学 学術研究院 保健学域 教授)

2.発表のポイント:

  • 血液による脳内アルツハイマー病変の診断技術に用いられているバイオマーカー分子APP669-711の産生機構については一切不明でした。
  • ADAMTS4と呼ばれるプロテアーゼがAPP669-711の産生に関わっていることを世界で初めて明らかにしました。
  • 脳内の病変がどのように血液中のAPP669-711およびアミロイドβ関連ペプチドの存在量に影響を与えるかが解明され、更に正確にアルツハイマー病を診断、予測できる技術開発に貢献すると考えられます。

3.発表概要:

 東京大学大学院薬学系研究科の富田泰輔教授、横山雅シャラ大学院生、松崎将也大学院生(研究当時)、島津製作所の金子直樹係長、田中耕一エグゼクティブリサーチフェロー、岡山大学学術研究院保健学域の廣畑聡教授が、アルツハイマー病の血液診断法に用いられるバイオマーカー分子(注1)APP669-711の産生に関わるプロテアーゼ(注2)としてADAMTS4を同定しました。
 現在、アルツハイマー病の予防や治療にあたっては早期から介入することが必要であると理解され、脳内の病変を簡便かつ正確に診断する技術の開発が求められています。APP669-711は血液バイオマーカー分子として2014年に同定された新しいペプチドですが、どのように産生されるのかについては一切不明でした。研究グループは培養細胞や動物モデルを用いてADAMTS4と呼ばれるメタロプロテアーゼがAPP669-711の産生に関わっていることや、APP669-711もまた脳内に蓄積していることを明らかにしました。これらの発見は血液中のAPP669-711を利用した脳内病変診断技術が更に正確になることや、ADAMTS4を標的とした新しいアルツハイマー病診断・治療法の開発に繋がる可能性があります。
 本研究成果は、日本時間2月1日午前10時(英国標準時間2月1日午前1時)に米国科学誌「Molecular Psychiatry」のオンライン版に掲載されました。

■論文情報
雑誌名:「Molecular Psychiatry」(オンライン版:2月1日)
論文タイトル:ADAMTS4 is involved in the production of the Alzheimer disease amyloid biomarker APP669-711
著者:Masaya Matsuzaki, Miyabishara Yokoyama, Yota Yoshizawa, Naoki Kaneko, Hiroki Naito, Honoka Kobayashi, Akihito Korenaga, Sadanori Sekiya, Kentaro Ikemura, Gabriel Opoku, Satoshi Hirohata, Shinichi Iwamoto, Koichi Tanaka, and Taisuke Tomita*
DOI番号:10.1038/s41380-023-01946-y
アブストラクトURL:https://www.nature.com/articles/s41380-023-01946-y

<詳しい研究内容について>
脳内のアルツハイマー病変を早期検出する血液バイオマーカーの産生機構を解明

<研究に関するお問い合わせ>
東京大学大学院薬学系研究科 機能病態学教室
教授 富田 泰輔(とみた たいすけ)
研究室URL:https://neuropsc.f.u-tokyo.ac.jp/

<報道に関するお問い合わせ>
東京大学大学院薬学系研究科 庶務チーム

科学技術振興機構 広報課

<JST事業に関するお問い合わせ>
科学技術振興機構 ムーンショット型研究開発事業部
犬飼 孔(いぬかい こう)

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