岡山大学
アルケア株式会社
◆発表のポイント
- 皮膚機能のなかでも重要とされる「皮膚バリア機能」を評価する値「皮膚からの水分蒸発量」は、皮膚表面に当てた経表皮水分蒸散量計で評価しますが、皮膚内の何が影響しているかの仕組みは、これまでの研究で明らかにされていませんでした。
- 本研究では「皮膚表面に当てた経表皮水分蒸散量計で測定される水分蒸発量は、皮膚の中のどのような水分の動きによるものか」の仕組みの仮説を立て、皮膚からの水分蒸発量を推定できる新たな計算モデルを確立しました。これにより、皮膚からの水分蒸発量が「角層の厚さの変化に影響したもの」か、もしくは「角層の水分量の変化に影響したもの」なのかを推定できる可能性があります。
- 研究が進むことで、「皮膚バリア機能」を定量的に評価できる可能性が高くなり、皮膚科学、看護学、化粧品開発などの領域で非常に有用であると考えます。また、皮膚疾患になる前の予兆を捉え皮膚病を未然に防げることが期待されます。
- この研究成果は日本生体医工学会(JSMBE)の英文論文誌Advanced Biomedical Engineering(ABE)の2023年12巻に掲載予定です。
岡山大学学術研究院保健学域放射線技術科学分野の中村 隆夫 教授、楠原 俊昌 助教、アルケア株式会社(本社:東京都墨田区、代表取締役社長:伊藤 克己、以下「アルケア」)の価値創造部に在籍する上原 治(専門:生体計測技術)の共同研究グループは、皮膚機能のなかでも重要とされる「皮膚バリア機能」に注目し、皮膚バリア機能の定量的な評価の実現を目指して研究を進めております。
今回、角層の厚さと角層の表面の水分量を計測した結果から、皮膚からの水分蒸発量を推定できる新たな計算モデルを確立しました。皮膚からの水分蒸発量は、皮膚バリア機能の評価をする値として長く用いられてきましたが、水分蒸発量を決定する仕組みは現状解明されていません。今回開発した計算モデルを利用すれば、「角層の厚さの変化」「角層の水分量の変化」のどちらが影響した数値かを示せる可能性があります。
◆研究者からひとこと
皮膚バリア機能評価に皮膚からの水分蒸発量が用いられており、この蒸発量を決定する要素(角層の厚さ、角層の水分量)と仕組みについて検証し、そのモデルを確立しました。今回の研究結果が美容、疾患、加齢などあらゆる皮膚科学領域においてお役に立てればと思います。 | 中村教授 |
■論文情報
論 文 名:Transepidermal water loss estimation model for evaluating skin barrier function
掲 載 紙:Advanced Biomedical Engineering, Vol. 12 (2023) p.1-8
著 者:Osamu Uehara*, Toshimasa Kusuhara**, Takao Nakamura**
*Medical Engineering Laboratory, ALCARE CO., Ltd., Tokyo, Japan
**Department of Radiological Technology, Graduate School of Health Sciences, Okayama University, Okayama, Japan
D O I: https://doi.org/10.14326/abe.12.1
■研究資金
本研究は、アルケア株式会社の支援を受けて実施しました。
<詳しい研究内容について>
皮膚からの水分蒸発の仕組みを明らかにし、蒸発量の推定モデルを確立!~皮膚疾患の予兆を捉え皮膚病を未然に防ぐ可能性へ~
<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院保健学域 放射線技術科学分野
教授 中村 隆夫
(電話番号) 086-235-6874
(FAX) 086-222-3717
アルケア株式会社
総務広報部 広報課(松永、高居)
(メール)pr◎alcare.co.jp
※@を◎に置き換えています。