国立大学法人 岡山大学

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「誰一人取り残さない」 将来、子どもを希望するがん患者の支援のための「がん生殖医療・妊孕性温存相談・紹介の手引き」が完成

2023年04月20日

◆発表のポイント

  • がんの化学療法や放射線療法により、将来、子どもを持つための能力(妊孕性)が低下してしまうことがあります。そのため、がん治療前に精子や卵子、卵巣などを凍結保存しておく「生殖機能温存・妊孕性温存」が行われています
  • 岡山県は、がん治療に関連する医療スタッフに妊孕性温存治療を知ってもらい、支援者となってもらうために『妊孕性温存に係る医療従事者研修事業』を展開しています。
  • 医療スタッフに、妊孕性温存治療の基礎的知識、その可能性と限界、また、岡山県における助成制度などを知ってもらったうえで、患者の相談に乗り、専門施設に紹介してもらうため、必要な情報を広く盛り込んだ冊子が完成しました。

 近年、医学の進歩とともに、がんを克服し、その後に子どもを持つことを希望する方々が増えています。しかし、がんの治療である化学療法(抗がん剤治療)や放射線療法を行うと、卵巣や子宮、精巣など、妊娠に必要な臓器がダメージを受け、子どもを持つことができなくなってしまう場合があります。これに対して、生殖医療の進歩とともに、卵子・精子・胚(受精卵)の凍結保存や、卵巣自体の凍結保存により、将来、子どもを持つ可能性を残すことができるようになっています。
 種々の方法の中には高額な費用が必要なものもあり、中には実施を躊躇する例も見られます。このため、岡山県は『岡山県小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業』により費用の一部助成を行っています。しかし、がん治療に関与する医療スタッフの中には、妊孕性温存治療や助成制度について知らなかったり、患者に説明できなかったりする人もいます。
 岡山大学病院リプロダクションセンター、岡山大学大学院保健学研究科では、医療スタッフからの説明を受けることがないまま、妊孕性温存の機会を逸するがん患者がいなくなるように、医療スタッフ向けの「がん生殖医療・妊孕性温存相談・紹介の手引き」を作成しました。
 この手引きは、がん患者に対して、妊孕性温存の説明をするうえで必要な基礎知識、利用可能な資材や相談窓口を紹介するとともに、妊孕性温存を希望した場合の専門施設への紹介のためのフロー図を掲載。フロー図は、妊孕性温存を希望してもできなかった例、妊孕性温存をしなかったが子どもを希望する例、その家族などが「誰一人取り残されることなく」支援を受けられるような相談・紹介の流れになっています。子どもを希望するがん患者が、切れ目ない支援を受けられることにつながればと思います。

◆研究者からのひとこと

岡山大学病院リプロダクションセンターでは、がん患者の妊孕性温存治療を行うとともに、この治療を広く知っていただくための活動をしています。

  「がんと生殖医療ネットワークOKAYAMA」代表
  岡山大学病院リプロダクションセンター センター長
  岡山県不妊専門相談センター センター長
                    中塚幹也


<詳しい内容について>
「誰一人取り残さない」 将来、子どもを希望するがん患者の支援のための「がん生殖医療・妊孕性温存相談・紹介の手引き」が完成


<お問い合わせ>
岡山大学大学院保健学研究科 中塚研究室
岡山大学生殖補助医療技術教育研究(ART)センター
(氏名)中塚幹也
(電話番号)086-235-6538(FAX兼)

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