国立大学法人 岡山大学

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医療者のためのアートワークショップ~アートが導く対話、気づき、そしてケア~

2023年06月28日

◆発表のポイント

  • 現代社会の正解なき課題や悩みに対応し人生を豊かにするためには、様々な「気づき」と「振り返り」が必要である。
  • アートを利用したワークショップで、対話を軸とした「気づき」と「振り返り」の重要性を知ることができる。
  • 医学生600名以上の実績から医療者向けのワークショップを開発し、今後広く展開する予定である。

 医療の進歩により、様々な疾患の治療が可能になってきました。しかし、科学的根拠のある治療は少なく、実際は正解のない医療が80%以上と言われています。患者さんごとに病態、社会的背景、性格など全てが異なるからです。これからの医療には、この正解なき課題に対応する力や共感力などの向上が必要で、そこには、様々な「気づき」と「振り返り」が鍵となります。そこで、岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)の木股敬裕教授と小比賀美香子講師は、2020年より岡山県立美術館の協力のもと、欧米の対話を用いた鑑賞に加えデッサンと学生によるアートについてのプレゼン授業を日本で初めて医学生に導入したところ、次世代の良き医療者を育てる意味で高い満足度を得ることができました。地域や全国のマスコミにも取りあげられました。
 この結果から、医療職の方々にこそこの試みが必要と考え、福武教育文化振興財団の支援を得て新たなアートを利用したワークショップの開発を行いました。やはり目的は「気づき」と「振り返り」で、準備段階でご参加していただいた方達からは、普通の研修やセミナーと全く異なり深く心の中に余韻として残る貴重な時間であったとコメントをいただいています。ついては今秋から、県立美術館を会場に公募形式で本格的に実施する予定です。先の見えない社会で生き抜く力が必要とされている現在、この試みは一つの鍵になるだけでなく人生を豊かにする可能性も含まれ、今後、医療のみならず一般社会人への展開も視野に入れています。アート豊かな岡山から日本初のアートワークショップを発信する意味は大きいと考えています。

◆研究者からひとこと

これまで、600名以上の医学部生に本授業を行って来ました。常に勉強で多忙な彼らにとって、この非日常的な授業は非常に刺激的で、様々な「気づき」により、自分自身を深く考えるようになっています。また、対話を含めてワークがとても楽しかったと言ってくれて嬉しい限りです。現代人はみんな悩んでいます。でも対話によりその解決策が見つかるかもしれません。どなたでも参加する価値はありますし、参加してほしいと思っています。
木股教授

■論文情報
1) 大塚益美、松本洋、木股敬裕:医学教育における「デッサン教室」導入の試みーデッサンからアートの昇華―、岡山医学会雑誌 130, 81-84, 2018.
2) 松本洋、北口洋平、木股敬裕、大塚益美:医学における「ビジュアルアート教育」の導入:第2ステップ-アートから診る力、伝える力を養う-、岡山医学会雑誌132,98-101, 2020.
3) 木股敬裕、小比賀美香子、久保卓也、大塚益美、岡本裕子、福冨幸、松本洋:医学における「ビジュアルアート教育」の展開:第3ステップ―岡山県立美術館の協力による対話型鑑賞の導入― 岡山医学会雑誌, 2023, in press.

■研究資金
 本研究は、以下の支援を受けて実施しました。
1)JSPS科研費2021年度基盤研究(C)、JP21K10327、代表小比賀美香子:医学における「ビジュアルアート教育」に関する調査研究
2)公益財団法人 福武教育文化振興財団,2022年度、2023年度特定助成(先進的事業助成)代表 木股敬裕:健康と豊かな人生を創るためのビジュアルアート教育

<詳しい研究内容について>
医療者のためのアートワークショップ~アートが導く対話、気づき、そしてケア~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域 形成再建外科学
教授 木股敬裕
(電話番号)086-235-7212
(FAX)086-235-7210

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