国立大学法人 岡山大学

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天然物の超難問:幻のインドールアルカロイドの正体を解き明かせ!!

2023年07月13日

◆発表のポイント

  • 2010年にoxytropis falcataの根から単離されたoxytrofalcatin Cは、これまでに前例がないN-ベンゾイルインドール誘導体であると報告されました。
  • 提唱構造であるN-ベンゾイルインドール誘導体の合成に成功しましたが、機器分析データが一致しなかったことからインドール誘導体ではないことが判明しました。
  • Oxytrofalcatin Cの生合成経路をヒントに、oxytrofalcatin Cがオキサゾール誘導体であると予想し、これを実際に合成しました。
  • オキサゾール誘導体と単離論文で報告されているデータが一致したことから、oxytrofalcatin Cの世界初全合成と構造訂正を達成しました。

【研究概要】
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)精密有機合成化学分野の杉立一真(博士前期課程2年)、山城寿樹(本学博士課程修了者、現 北海道医療大学薬学部助教)、北海道医療大学薬学部の山田康司准教授、岡山大学学術研究院医歯薬学域(薬)精密有機合成化学分野の阿部匠講師らは、極性転換型インドール試薬を駆使し、通常の方法では合成が困難なoxytrofalcatin Cの提唱構造を合成しました。しかし、各種測定データが単離論文の測定データと一致しなかったことから、生合成経路をもとに天然物の真の構造を再考し、オキサゾールではないかと予想しました。この予想の元、オキサゾールの合成を行ったところ、文献で報告されている測定データと一致したことから、oxytrofalcatin Cの全合成を達成しました。また、同様の骨格であるoxytrofalcatin Bもオキサゾールであることを確認しました。
 本研究成果は、2023年7月11日、アメリカの科学誌「Journal of Organic Chemistry」に掲載されました。今後、すべてのoxytrofalcatin類の合成と真の構造の解明が期待されます。

◆研究者からひとこと

天然物の提唱構造が間違っていたという話はよくある話です。有機化学を駆使して、フラスコを使っての化学合成が必要な理由の一つです。まさかインドールがオキサゾールだったなんて、誰が想像し得たでしょうか。我々もこのパズルを解くことができて非常に驚いています。今後も、oxytrofalcatin類の全合成を進め、全てのパズルを完成させたいと思います。(杉立)
杉立 院生

山城 博士
(現 北海道医療大学助教)

阿部 講師

■論文情報
論文名: Oxytrofalcatin Puzzle: Total Synthesis and Structural Revision of Oxytrofalcatins B and C
掲載誌: Journal of Organic Chemistry
著者: Kazuma Sugitate, Toshiki Yamashiro, Ibuki Takahashi, Koji Yamada, Takumi Abe
D O I : doi.org/10.1021/acs.joc.3c00691
U R L : https://doi.org/10.1021/acs.joc.3c00691

■研究資金
本研究は科学研究費補助金(22K06503)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
天然物の超難問:幻のインドールアルカロイドの正体を解き明かせ!!


<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院 医歯薬学域(薬)
 講師 阿部 匠

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