国立大学法人 岡山大学

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免疫チェックポイント阻害剤誘発心筋炎のリスクとなる薬剤を発見!~リアルワールドデータを実臨床に還元~

2023年07月24日

◆発表のポイント

  • 医療情報ビッグデータを活用したデータサイエンスにより、免疫チェックポイント阻害剤とチアジド系利尿剤の併用は、心筋炎の発症リスクを高めることを明らかにしました。
  • 免疫チェックポイント阻害剤とチアジド系利尿剤の併用したときの心筋炎は、その他の要素(年齢や性別、他の利尿剤の併用など)の影響を排除しても、引き起こされることが判明しました。
  • 利尿剤は心血管イベントの治療において重要な役割を果たしますが、各薬剤の副作用リスクに関する研究が進展することで、心筋炎発症時の最適な薬物療法の解明に繋がることが期待されます。

 岡山大学病院薬剤部の濱野裕章講師と座間味義人教授は、共同研究グループの下越病院(新潟市秋葉区)の三星悟薬剤師、カリフォルニア大学アーバイン校のAya F. Ozaki助教とPranav Patel教授、徳島大学病院薬剤部の石澤啓介教授、岡山大学学術研究院医歯薬学域(同大学大学院医歯薬学総合研究科附属医療教育センター)の小山敏広准教授、名古屋大学大学院情報学研究科生命情報論講座の山西芳裕教授、国立医薬品食品衛生研究所薬理部の諫田泰成部長と連携して、医療情報ビッグデータを活用したデータサイエンスにより、免疫チェックポイント阻害剤による心筋炎のリスク因子を明らかにしました。特に、免疫チェックポイント阻害剤とチアジド系利尿剤の併用は心筋炎の発症リスクを高めることが判明しました。
 これらの薬物は心血管イベントの治療において重要な役割を果たしていますが、個々の薬物の副作用リスクについての研究が進められ、心筋炎発症時の最適な薬物療法の選択につながる可能性が期待されています。これらの研究成果は患者個々の状態に合わせた最適な薬物治療の選択、つまり、薬物治療の個別化の推進に寄与する可能性があります。
 本研究成果は、2023年6月12日に癌研究の国際医学雑誌である「International Journal of Cancer」にオンライン版として掲載されました。

◆研究者からひとこと

 医療情報ビッグデータを用いたデータサイエンス研究を通じて、現在注目されている最新の薬物療法の治療戦略を構築することに貢献できたと考えています。この研究は、国内外の研究者との協力によって実現した共同研究成果になります。今後も、世界に役立つエビデンスを構築し、患者さんにとって安心の医療を提供していきたいと考えています。
濱野講師

■論文情報
論 文 名: Association between immune checkpoint inhibitor‐induced myocarditis and concomitant use of thiazide diuretics
邦 題 名: 「免疫チェックポイント阻害剤による心筋炎とチアジド系利尿剤の併用との関連性」
掲 載 紙: International Journal of Cancer (Impact Factor: 7.316)
D O I:10.1002/ijc.34616.
発表論文はこちらからご確認できます。

■研究資金
 本研究は、武田科学振興財団や科学研究費などの支援を受けて行いました。

<詳しい研究内容について>
免疫チェックポイント阻害剤誘発心筋炎のリスクとなる薬剤を発見!~リアルワールドデータを実臨床に還元~


<お問い合わせ>
岡山大学病院 薬剤部 講師
濱野 裕章
(電話番号)086-235-7641
(FAX番号) 086-235-7974

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