国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

施設入所している知的障がい者の認知症有病率について全国調査~知的障がい者の認知症発症に関わるリスク因子を発見~

2023年08月31日

◆発表のポイント

  • 全国各地(北海道~中四国地方)の入所施設において、知的障害がある方における認知症の実態について調べました。
  • 知的障害がある方において、認知症が一般人口と比べて、若い年齢から高率に生じることが分かりました。
  • 十分な教育、頭部外傷と脳卒中の予防、高血圧とうつ病の治療が、認知症のリスクを低減させる可能性があることを明らかにしました。

 岡山大学病院精神科神経科の竹之下慎太郎助教、岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)精神神経病態学の寺田整司准教授らの研究グループは、社会福祉法人旭川荘の桑野良三医師らと共同で、知的障害がある方における認知症の実態について全国的な調査を実施しました。研究では、知的障害がある方において、これまでに認識されていた以上に、認知症が若い年齢から高率に生じることが分かりました。本研究では、認知症の有無と「教育期間の短さ、高血圧、うつ病、脳卒中、外傷性脳損傷」が関連していました。このことから、知的障害がある方の認知症予防は、これらのポイントに注目して行うことが重要である可能性が示されました。本研究の成果は、「Alzheimer's Research & Therapy」電子版に7月18日に掲載されました。

◆研究者からひとこと

 知的障害がある方に認知症が生じると、「元々の障害として存在する認知機能障害」と「認知症によって途中で生じた認知機能低下」が混在するため、知的障害がない方と比べて診断が難しくなり、医療機関では障害がある方の認知症診療が敬遠される傾向にあります。しかし、支援者の情報に基づいて、時系列に沿って認知機能や生活機能を評価すれば、認知症の診断は十分可能です。知的障害がある方においても認知症が適切に評価され、必要な治療や支援から取り残されることがないように配慮する必要があると考えています。
竹之下助教

■論文情報
論 文 名:Prevalence and modifiable risk factors for dementia in persons with intellectual disabilities.
掲 載 紙:Alzheimer's research & therapy.
著  者:Shintaro Takenoshita, Seishi Terada, Tomokazu Inoue, Taku Kurozumi, Norihito Yamada, Ryozo Kuwano, Shigeru Suemitsu
D O I:10.1186/s13195-023-01270-1.
U R L:https://alzres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13195-023-01270-1

■研究資金
 本研究は、日本財団研究支援事業(2018488269、研究代表:桑野良三)及び、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(若手研究21K15713、研究代表:竹之下慎太郎)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
施設入所している知的障がい者の認知症有病率について全国調査~知的障がい者の認知症発症に関わるリスク因子を発見~


<お問い合わせ>
岡山大学病院 精神科神経科
助教  竹之下慎太郎
(電話番号)086-235-7242 (FAX)086-235-7246

年度