国立大学法人 岡山大学

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ミトコンドリア病の新たな原因遺伝子を発見

2013年11月22日

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の百田龍輔助教らの研究グループは、細胞外マトリックスタンパク質の一種XV/XVIII型コラーゲンの遺伝子の異常で、加齢に伴い著しいミトコンドリア障害を生じ、骨格筋・心筋の変性が起こることを発見しました。さらに同グループは、薬剤投与により症状を改善することにも成功しました。今後、原因不明のミトコンドリア病の診断法と治療法の開発が可能になるものと期待されます。平成25年2月に英文誌に掲載された論文は、カナダの医学情報社Global Medical Discoveryの重要科学論文(Key Scientific Articles)でも紹介されます。
<本 文>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の百田龍輔助教らの研究グループは、ヒトとショウジョウバエで多くの分子が共有されていることに着目し、ヒト疾患モデルとしてショウジョウバエ変異体の解析を行ってきました。その結果、細胞外マトリックスタンパク質の一種XV/XVIII型コラーゲンの遺伝子の変異体ハエが、加齢に伴い著しいミトコンドリア障害による筋変性という「ミトコンドリア病」の症状を起こすことを発見しました。ミトコンドリア病の原因として、これまでにミトコンドリア構成成分やミトコンドリアへの物質輸送に関わるタンパク質など200近い遺伝子の変異が同定されています。今回の発見は、細胞内のミトコンドリアとは別の空間にある細胞外タンパク質の異常によるもので、ミトコンドリア病の原因因子をさらに広く捉える必要があることを示すものです。多くが原因不明であるミトコンドリア病の原因遺伝子の究明が今後さらに進むことが期待されます。
 さらに同グループは、XV/XVIII型コラーゲンが細胞膜に存在する受容体を介した経路でミトコンドリアの機能に影響を及ぼすことを見出し、薬剤投与によりその経路を阻害することで、疾患モデルショウジョウバエの症状を改善することにも成功しました。この薬剤は既に他の用途で認可されているため、治療法の確立も早いことが期待されます。
 これらの成果は、平成25年2月20日付で英文科学雑誌The International Journal of Biochemistry & Cell Biology電子版に掲載されました。
 またこの論文は、カナダの医学情報社Global Medical Discovery [ISSN 1929-8536] の重要科学論文(Key Scientific Articles)に選ばれ、同社ホームページにて紹介されます。

<補足>
  • ミトコンドリア病:平成21年10月に厚生労働省特定疾患治療研究事業の対象疾患として認定された「難病」の一つです。全身の細胞に存在し、酸素を利用してエネルギーATPを合成するミトコンドリアは細胞内の「発電所」です。その機能が低下する病気を総称してミトコンドリア病といいます。この病気ではエネルギーを十分に供給できないので細胞の機能が低下し、様々な症状を引き起こしますが、特にエネルギーを多く必要とする神経・筋肉・心臓などに症状が現れやすいです。例えば、眼であれば物が見えにくい、筋肉であれば運動ができない・疲れやすい、心臓であれば全身に血液を送ることが困難になるなどが挙げられます。日本ではまだ全国規模の調査が行われておらず、現在受診している患者数は1000人程度と推定されていますが、軽微な症状のものまで含めると実際には国内で数万人とも言われています。
  • 細胞外マトリックス:細胞外の空間を充てんするタンパク質、糖などが構成する超分子構造体で、細胞接着の足場として、また生理活性物質の保持などの役割があります。多細胞動物においては、コラーゲン、ラミニンなどのタンパク質、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸など多糖が代表的なものとして挙げられます。
  • Global Medical Discoveryの重要科学論文(Key Scientific Articles):理学および医学分野で出版される国際誌を網羅し、2万件以上の論文中から審査委員が注目論文として選定して紹介するサイトで、国際的に評価があるとされています。
発表論文はこちらからご確認いただけます
Global Medical Discovery社  http://globalmedicaldiscovery.com

添付資料はこちらをご覧ください

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ先>
  岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 助教
(氏名)百田 龍輔
(電話番号)086-235-7091
(FAX番号)086-235-7095

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