◆発表のポイント
- 動くことできない植物は常に変動する環境にさらされています。特に光環境は秒単位で大きく変わります。そのため植物は様々な光防御の仕組みを持っています。
- シロイヌナズナで、光合成反応の様々な調節に関わるチオレドキシンの研究を進めたところ、強すぎる光から光合成装置を守る働きも持っていることを新たに発見しました。
- 本研究は環境ストレスに強い作物の改良に役立つことが期待されます。
岡山大学資源植物科学研究所・光環境適応研究グループの桶川友季助教・坂本亘教授らは、京都産業大学生命科学部と共同で研究を行い、植物の葉緑体において光合成の調節因子として働くことが知られていたチオレドキシンというタンパク質が、変動する光環境下で光合成装置を強すぎる光から守る働きも持っていることを明らかにしました。
この研究成果は、8月22日に国際科学誌「Plant Physiology」のオンライン版で公開されました。
光合成には光が必要ですが、強すぎる光は植物にとってストレスとなり、光合成装置にダメージを与え、光合成の能力が低下します。植物はこれらのストレスに対応するために様々な仕組みを使って光合成能を維持しています。今回、シロイヌナズナのチオレドキシンタンパク質を欠損した変異体を使って、変動する光環境下で光合成活性を測定しました。その結果、チオレドキシンが変動する光ストレス環境条件で光合成装置を守り、これが変動する光環境下での植物の成長に必要であることが明らかになりました。
◆研究者からひとこと
まだまだモデル植物での研究段階ですが、私たちの研究が地球温暖化などの気候変動に伴って想定される様々なストレスに対して強い作物の改良に将来的に役立つことができればうれしいです。 | 桶川友季助教 |
■論文情報
論 文 名:x- and y-type thioredoxins maintain redox homeostasis on photosystem I acceptor side under fluctuating light
掲 載 紙:Plant Physiology(2023年8月22日にオンライン版で公開)
著 者:Yuki Okegawa*, Nozomi Sato, Rino Nakakura, Ryota Murai, Wataru Sakamoto and Ken Motohashi*
D O I:https://doi.org/10.1093/plphys/kiad466
U R L:https://academic.oup.com/plphys/advance-article-abstract/doi/10.1093/plphys/kiad466/7247417(オープンアクセス)
■研究資金
本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金(基盤研究C・21K06219、研究代表者:桶川友季)および科学研究費助成事業(学術変革領域研究(A)「光合成ユビキティ」・23H04961、研究分担者:桶川友季)の助成を受けておこなわれました。また岡山大学のオープンアクセス出版助成の支援を受けて出版されました。
<詳しい研究内容について>
強すぎる光から光合成装置を守る新たなしくみを発見〜シロイヌナズナの変異体を用いた研究から〜
<お問い合わせ>
岡山大学資源植物科学研究所
光環境適応研究グループ
助教 桶川 友季
(電話番号)086-434-2341
(HP) www.rib.okayama-u.ac.jp/index-j.html