国立大学法人 岡山大学

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新規で安価なプロテオミクス技術の開発に成功!~個別化医療の精度を上げる自己抗体バイオマーカー探索の強力ツールに~

2023年09月19日

◆発表のポイント

  • ヒト細胞内総タンパク質を疎水性度と分子量で2次元分離する新規法を開発しました。これにより、患者さんのわずかな末梢血から、疾患の診断等に役立つ自己抗体を効率的に同定することが可能となります。
  • プロテオミクス解析用の2次元分離膜を安価に再現性よく大量に調製可能で、大規模スクリーニングを行うことが可能となります。
  • 実際に26種類の自己抗体バイオマーカーを発見しており、免疫モニタリングシステムの高精度化に貢献します。

 岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域(工)の二見淳一郎教授と、大学院ヘルスシステム統合科学研究科博士後期課程の伊達実鈴大学院生は、培養細胞中の総タンパク質から核酸などの不純物を取り除いた後、変性状態の総タンパク質を水溶性で抽出する独自の技術の開発に成功しました。この技術を活用し、総タンパク質を疎水性度(HYD)と分子量(MM)に基づいて、再現性よくHYD/MM-2次元で分離する新しいプロテオミクス技術を開発しました。
 さらに、実際に肺がん患者からの微量の血漿検体を使用して、この技術を用いた実験を行い、26種類の有望な自己抗体バイオマーカーを発見し、免疫プロファイリング・モニタリング技術開発に活用できることも示しました。この手法は一般的な生化学実験設備があれば再現性の高いプロテオミクス研究を行うことができ、大規模なスクリーニングにも適しています。
 この研究成果は2023年8月28日、タンパク質科学会誌「Protein Science」にオンライン版として掲載されました。

◆研究者からひとこと

 患者さんから提供していただく貴重な血液検体に含まれる自己抗体バイオマーカーを効率的に探す方法を開発しました。実験作業はまるで「宝探し」ですが、変性状態のタンパク質を取り扱う技術を駆使して、効率的に宝探しができる技術を開発することができました。この宝物を並べれば免疫が関わる様々な疾患に対する個別化医療を実現するツール開発につながると思います。
伊達大学院生(左)
二見教授(右)

■論文情報
論 文 名:Hydrophobicity and molecular mass-based separation method for autoantibody discovery from mammalian total cellular proteins
掲 載 紙:Protein Science
著者:Mirei Date, Ai Miyamoto, Tomoko Honjo, Tsugumi Shiokawa, Hiroko Tada, Nobuhiro Okada, Junichiro Futami
D O I:10.1002/pro.4771
U R L:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/pro.4771

■研究資金
 本研究は、日本学術振興会(JSPS)の科学研究費助成事業(基盤B :22H01881)および科学技術振興機構(JST)の大学発新産業創出プログラム(START)(JPMJST1918)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
新規で安価なプロテオミクス技術の開発に成功!~個別化医療の精度を上げる自己抗体バイオマーカー探索の強力ツールに~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域
バイオ・創薬部門(工学部 化学・生命系)
 教授 二見 淳一郎
(電話番号)086-251-8217

年度