国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

AI技術の応用により、泳ぐ錦鯉の寸法自動計測方法開発に成功!-強い感染力を持つコイヘルペスウイルス(KHV)の感染防止にも効果

2023年10月06日

◆発表のポイント

  • 「泳ぐ宝石」とも呼ばれている錦鯉の養殖育成産業は、日本独自の文化のひとつとして発展を続け、現在では日本の重要な輸出産業のひとつに数えられています。全日本錦鯉振興会や全日本愛鱗会を中心として、年数回の品評会で錦鯉を評価し、養殖業者が切磋琢磨することで、より芸術的価値の高い錦鯉を育成し愛でる日本独自の文化として発展してきました。
  • 近年、強い感染力を持つコイヘルペスウイルス(KHV)が日本でも広まったことで、養殖業者はそれぞれの鯉の感染防止に細心の注意を払う状況となっていますが、品評会では錦鯉を体長によりグループ分けをして評価するため体長計測が必須であり、現状はテーブル上で作業者が鯉を手作業で計測しているため、KHVの感染リスクがありました。
  • この計測時に、様々なウイルスや細菌などからの感染を防止するためには、感染リスクが全く無い「非接触寸法計測」の開発と実用が強く望まれています。さらに、正確な個体の寸法を計測する事は、出品された錦鯉を公平にグループ分けすることにつながり、グループ毎に優劣を競う品評会の運営では、重要な技術的課題でもありました。
  • 以上の要望に応えるため、KHVの感染防止を保証しつつ、泳ぐ錦鯉の寸法計測を可能とする、AI技術を応用した複眼カメラリモート空間計測方法を開発しました。

 岡山大学発ベンチャーの株式会社ビジュアルサーボ(岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の見浪護特命教授が起業)は、ステレオビジョンを用いた空間計測について研究を行い、任意対象物の3次元位置姿勢を計測するコンピュータビジョン構築に成功しました。これにより、泳ぐ魚の3次元位置姿勢の計測が可能となり、カメラ-魚間の距離を算出し、魚の寸法を計測できるようになりました。また、この計測方法では、魚を水中から取り出してテーブル上で全長計測する必要が無く、ナイロン袋などの透明な袋内で泳いでいる状態での計測を行うことができます。
 通常、同種の魚は同じ体型、同じ体表の模様を持つことが多いですが、錦鯉は個々が異なる体表模様を持っているため、画像を用いた全長計測では処理プログラムが複雑になります。この問題を、複眼カメラで同じ錦鯉を撮像した左右カメラ画像は、異なる位置・角度から撮像した視差画像であるという特徴を生かすことで、解決しました。
 見浪特命教授は、一般社団法人全日本錦鯉振興会関西地区長の児島徳昭理事の協力を得て、錦鯉のリモート計測値とテーブル上での全長(透明袋に鯉が袋の中で泳げる水量を入れた状態で計測)を測定しました(画像2:計測実験に用いた12匹の錦鯉のうち7匹の錦鯉の写真)。リモート計測方法は、動画から一対の左右カメラ写真を撮影し、その写真から20回全長を計測した後、平均値と標準偏差を算出しました。その結果、12匹のリモート計測平均値(167.7mm)と全長の実測(172.4mm)の誤差は、わずか4.7 mm でした。この数値を実測値平均値172.4mmで割った平均全長誤差割合は2.7%で、リモート測定値の標準偏差の平均は1.9mmでした。今回の提案手法は、錦鯉を透明な袋から出すことなく寸法計測できるため、コイヘルペスウイルスに感染する危険はありません。


<詳しい研究内容について>
AI技術の応用により、泳ぐ錦鯉の寸法自動計測方法開発に成功!-強い感染力を持つコイヘルペスウイルス(KHV)の感染防止にも効果


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(工)
特命教授 見浪 護

岡山大学発ベンチャー 株式会社ビジュアルサーボ
HP:https://visual-servo.com/

年度