国立大学法人 岡山大学

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日本ビール大麦の150年の改良の歴史を遺伝子で紐解く

2023年11月29日

◆発表のポイント

  • 文明開化で国産ビール醸造の機運が高まり欧米からビール大麦が導入され、栽培適地では無い日本の高温・多湿の過酷な環境に適応できるよう品種改良が始まりました。
  • ビール大麦新品種の開発に役立つ遺伝情報を得る目的で、種子で発現する遺伝子群やウイルス病抵抗性遺伝子を、現在の主力品種スカイゴールデンとサチホゴールデンで比較しました。
  • 日本ビール大麦は東アジア在来大麦の耐病性遺伝子を取り込みながら、150年程の短期間で日本向けに姿を変えた品種改良の歴史が遺伝子の解析から明らかになりました。

 日本のビール大麦は文明開化の約150年前の頃に導入された、いわば新参者です。それまでは約二千年前の弥生時代に朝鮮半島や中国を経由して伝来した六条オオムギのみで、それらはビールの濁りを引き起こすタンパク質含量が高く醸造原料には適さず食用に使われてきました。欧米からビール大麦品種のゴールデンメロンなどを導入して品種改良が始まりましたが、梅雨のある我が国の高温・多湿の厳しい環境や土壌中のウイルスで感染が広まる縞萎縮病に対して、欧米のビール大麦は耐性がなく品種改良は困難を極めました。
 今回の研究では、東アジアの在来品種からウイルス病抵抗性遺伝子を取り込みながら、日本のビール大麦が高い品質と収量を兼ね備えるまでに改良が進められた過程を種子で発現する遺伝子群を大量に解析して明らかにしました。ウイルス病抵抗性を在来品種から導入する際に、醸造に悪影響を与える遺伝子を切り離す工夫がされたことが、遺伝子の解析からわかりました。得られた研究成果は日本のビール大麦を世界水準で高品質化するための指針となると考えられます。生産者とビール会社にとって理想の新品種の開発につながる知見が得られたとみています。


■論文情報
論 文 名:Genomic traces of Japanese malting barley breeding in two modern high-quality cultivars, ‘Sukai Golden’ and ‘Sachiho Golden’.
掲 載 紙:Breeding Science
著  者:Taketa, S., J-S. Kim, H. Takahashi, S. Yajima, Y. Koshiishi, T. Sotome, T. Kato and K. Mochida
D O I:10.1270/jsbbs.23031
U R L:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbbs/advpub/0/advpub_23031/_pdf/-char/en


■研究資金
 本研究の一部は、東京農業大学生物資源ゲノム解析センター拠点共同研究費(13-B6)、ビール酒造組合共同研究費、(公)八雲環境科学振興財団環境研究助成金および科学研究費(23H02184)の支援を受けて実施しました。本研究は東京農業大学、理化学研究所および栃木県農業試験場と共同で実施しました。

<詳しい研究内容について>
日本ビール大麦の150年の改良の歴史を遺伝子で紐解く

<お問い合わせ>
岡山大学 資源植物科学研究所
教授 武田 真
(電話番号)086-434-1237 (直通)
(FAX)086-434-1249 (代表)

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