国立大学法人 岡山大学

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湾奥の地下に潜まる彼(か)は誰(たれ)ぞ—絶滅危惧貝類の新属新種、カハタレカワザンショウ—

2023年12月06日

◆発表のポイント

  • 本州中部~九州の内湾奥部河口域から、カワザンショウ科(軟体動物門:腹足綱≒巻貝類)の新属新種カハタレカワザンショウ Xenassiminea nana Fukuda, 2023 を記載しました。
  • 本種はカワザンショウ科の既知種の大半とは著しく異なる蝸牛形の外見を呈しますが、内部形態からこの科に属しています。体サイズ(殻長0.8 mm、殻径1.1 mm)は同科中で世界最小です。
  • 内湾奥の干潟上部で砂泥底へ深く埋もれた石の下に棲む地下生活者で、近年は棲息環境の急速な消失により、絶滅の危機に瀕しています。

 岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(農)の福田宏准教授は、貝類の新属新種カハタレカワザンショウ Xenassiminea nana Fukuda, 2023を記載しました。本種は日本本土温帯域の固有種で、砂泥干潟に深く埋もれた転石下に特異的に見られ、昨今の内湾環境の悪化によって減少傾向にあるため、環境省レッドリストで絶滅危惧II類(VU)とされています。
この研究成果は11月23日、日豪共同刊行の軟体動物学雑誌「Molluscan Research」にオンラインで掲載されました。

◆研究者からひとこと

今回の新種は、発見から正式記載成就まで31年も要したことを恥じ入ります。特にこの種は、私の研究者としての方向付けに著しく影響した点で大恩ある存在ながら、今は年々環境が悪化して絶滅の危機に陥りつつあります。お世話になった相手が窮地にあるのに手を差し伸べないのは間違っている、との焦燥と自己嫌悪をこの30年間ずっと抱えたまま、このたびようやく「負債」を一つだけ解消できてかすかに安堵しています。恩返しせねばならない貝たちはまだ他にたくさんいますが、今後少しずつ解決していきます。
福田准教授

■論文情報
論文名:A new genus and species of the Assimineidae (Caenogastropoda: Truncatelloidea) from temperate mainland Japan
掲載誌:Molluscan Research
著者:Hiroshi Fukuda
DOI:10.1080/13235818.2023.2278070
URL:https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13235818.2023.2278070

<詳しい研究内容について>
湾奥の地下に潜まるたれぞ—絶滅危惧貝類の新属新種、カハタレカワザンショウ—


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(農)
准教授 福田 宏
(電話・FAX)086-256-7151

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