国立大学法人 岡山大学

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筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に対する新たな幹細胞治療法の開発~Muse細胞治療の探索的試験において安全性を確認~

2023年12月21日

◆発表のポイント

  • ALSは運動ニューロンが選択的に変性脱落するために運動麻痺が進行する神経難病です。
  • ALS患者5人に対してMuse細胞1)製剤を投与する臨床試験を実施した結果、臨床試験を進めるうえで問題となる重大な副作用は認めませんでした。
  • 今後、さらに多くの患者を対象とした2重盲検比較試験を実施することで本治療の有効性を明らかにする必要があります。

 ALSは脳脊髄にある運動神経細胞が減少し続けて運動麻痺が進行する神経難病であり、根本的治療がないのが現状です。岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)脳神経内科学の山下 徹 准教授と国立精神・神経医療研究センターの阿部康二 病院長の共同研究グループは、孤発性ALS患者5人を対象に、Muse細胞製剤の臨床治験を岡山大学病院で実施しました。
 その結果、主要評価項目であるMuse細胞投与開始後12ヵ月までの安全性については、臨床試験を進めるうえで問題となる重大な副作用は認めませんでした。一方、副次評価項目である有効性に関しては、Muse細胞製剤投与前はALSFRS-Rスコア2)(ALSの日常活動機能を評価するスケール)が1月あたり平均0.47ポイント低下していたのが、Muse細胞投与後は平均0.25ポイントの低下にとどまるなど症状の進行スピードを緩やかにする傾向がみられました。これらの研究成果は2023年11月28日、米国科学誌「Cell Transplantation」のOriginal Articleとして掲載されました。

◆研究者からひとこと

この幹細胞治療法は、点滴による投与が可能な点が特徴で、患者さんの負担が比較的少ないのが特徴だと思います。患者さんに役立つ治療法に繋げるよう、今後とも頑張ります。
山下 徹 准教授

■論文情報
論 文 名:Safety and Clinical Effects of a Muse Cell-Based Product in Patients with Amyotrophic Lateral Sclerosis: Results of a Phase 2 Clinical Trial
掲 載 紙:Cell Transplantation
著  者:Toru Yamashita, Yumiko Nakano, Ryo Sasaki, Koh Tadokoro, Yoshio Omote, Taijun Yunoki, Yuko Kawahara, Namiko, Matsumoto, Yuki Taira, Chika Matsuoka, Ryuta Morihara, Koji Abe
D O I:10.1177/09636897231214370

■研究資金
 本研究は、株式会社 生命科学インスティテュート(LSII)ならびに文部科学省・日本学術振興会科学研究費補助の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に対する新たな幹細胞治療法の開発~Muse細胞治療の探索的試験において安全性を確認~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)脳神経内科学
准教授 山下 徹
(電話番号)086-235-7365
(FAX)   086-235-7368

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