国立大学法人 岡山大学

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リボソームがタンパク質の合成を中断する仕組みを解明!~疾患原因の解明や、効率的なタンパク質生産を実現する遺伝子設計、技術開発へ期待~

2024年01月15日

岡山大学
東京工業大学


◆発表のポイント

  • 特定のアミノ酸に富むタンパク質の合成は確率的に中断(強制終了)される場合があるものの、そのメカニズムは不明でした。
  • 上記の合成中断は1. 非典型的な翻訳終結反応、2. 合成途上での異常なリボソームリサイクル反応のいずれかによって引き起こされることが明らかとなりました。
  • 合成中断はタンパク質合成の滞りや温度条件に左右され、ストレス条件でより頻繁にタンパク質合成の異常が発生していることが示唆されました。

 岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の茶谷悠平准教授と東京工業大学科学技術創成研究院の田口英樹教授の合同研究チームは、これまで不明だったタンパク質合成中断のメカニズムを解明しました。
 生命を形作るタンパク質は、DNAの遺伝子配列をもとに、細胞内装置リボソームによって合成されます。リボソームは遺伝子配列を途切れることなくアミノ酸へと変換、連結することで、タンパク質を合成(翻訳)します。しかし、負電荷に富むアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)を立て続けに翻訳すると、一部のリボソームは合成を中断してしまうことが明らかにされていました。しかし、なぜ合成が中断されるのか、その分子メカニズムはこれまで不明でした。
 研究チームは試験管内の再構成実験から、上記の問題解決に臨み、研究の結果、合成中断は通常とは異なるメカニズムで新生タンパク質がリボソームから切り離されるか、合成中には作用しないはずのリボソームリサイクル経路の働きによって引き起こされていることが明らかとなりました。また、合成中断は、タンパク質合成が滞りがちな栄養枯渇や高温などストレス条件で、より起こりやすくなることも示唆されました。
 正確に遺伝子を発現させることは生命活動の大前提ですが、本研究からその障害となる異常反応の詳細なメカニズムが明らかとなり、より効率的なタンパク質発現を実現させる遺伝子設計、技術開発などが可能になると期待されます。
 本研究は米国学術雑誌「Cell Reports」オンライン版に2023年12月9日に掲載されました。

◆研究者からひとこと

リボソームが負電荷アミノ酸の合成を苦手とすることを発見したのが2014年、それからおおよそ10年続けてきた研究の、一つの重要な到達点と考えています。アミノ酸配列によるタンパク質合成の中断は、今回モデルに使用した大腸菌のみならず、ヒトなど真核生物でも発生しますので、我々ヒトなどの細胞中でこうした異常(制御)がどのような意義を持って発生しているか、また負電荷アミノ酸の翻訳で合成中断が起こる根本の原因(リボソームの構造変化)について、今後さらに研究していきたいと考えています。ご興味を持っていただけましたら、ぜひご連絡ください。
茶谷准教授

■論文情報
論 文 名:Mechanistic dissection of premature translation termination induced by acidic residues-enriched nascent peptide
掲 載 紙:Cell Reports
著  者:Yuhei Chadani, Takashi Kanamori, Tatsuya Niwa, Kazuya Ichihara, Keiichi I. Nakayama, Akinobu Matsumoto, and Hideki Taguchi
D O I:10.1016/j.celrep.2023.113569
U R L:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2211124723015814

■研究資金
 本研究は、日本学術振興会科研費(JP26116002, JP18H03984, JP20H05925, 17K15062, 19K16038)、大隅基礎科学創成財団(第3期研究助成)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
リボソームがタンパク質の合成を中断する仕組みを解明!~疾患原因の解明や、効率的なタンパク質生産を実現する遺伝子設計、技術開発へ期待~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域
准教授 茶谷 悠平
(電話番号)086-251-7856
(FAX)086-251-7876

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