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2022年の集計方法変更により、自死(自殺)の理由不明の事例が減少し、理由が同定された事例が増加したことが判明~現代の自死の理由解明へ新たな示唆~

2024年02月14日

岡山大学
慶應義塾大学医学部


◆発表のポイント

  • 警察庁による2022年の自死(自殺)集計方法変更が国の自殺統計データに影響を与えました。
  • 2022年の集計方法変更後は過去12年間の傾向に比べて、月あたりの理由不明の自死が167件減少、理由判明が839件増加(総数、重複あり)していました。
  • 集計方法変更の影響は7つの主要な理由カテゴリーに一貫して認められました。

 岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域の原田奈穂子教授、学術研究院医歯薬学域(医)の香田将英特任准教授、慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室の野村周平特任准教授は、2022年に警察庁によって実施された自死(自殺)統計の集計方法の変更が、どのように影響を与えたかを評価しました。
 2010年1月から2022年12月までのデータを用いて分割時系列解析を行い、新方法の導入前後の自死者数の水準と傾向の変化を調査しました。2010年1月から2021年12月までの理由が判明している死亡者数は274,274人※、新たな集計方法が適用された後の2022年1月から12月までの死亡者数は28,165人※でした。理由が特定された事例については、2021年は、月あたり平均1,723件※の推移であったのに対して、2022年の集計方法変更後は統計学的な分析を行ったところ、過去12年間の傾向と比べて839件(95%信頼区間639~1,039件)の増加が確認されました。これは、過去の傾向と比べて集計値の水準に変化があったことを表しています。この傾向は全てのカテゴリー(家庭問題、健康問題、経済・生活問題、勤務問題、交際問題、学校問題、その他の理由)で一貫していました。理由不明の事例に関しては、2021年が月あたり平均485件の推移であったものが、2022年は過去の傾向に比べて167件(95%信頼区間-225~-110件)減少していました。
 本研究結果は、2022年前後の単純な比較ができなくなった一方で、「理由不明」は減少しており、中長期的にみれば、今回の変更は、現代の自死の理由解明につながることが期待されます。
 本研究成果は、2023年12月14日、米国の医師会が発行する「JAMA Network Open」に掲載されました。

※論文内に直接の記載は無し

◆研究者からひとこと

今回の集計方法の変更により、多様な社会において自死を防ぐ取り組みに繋がることが期待されています。そのため、研究者は正しくデータを解釈していく必要があることを、私たち3人はこの研究を通して強調したいと思います。(岡山大学 原田教授)

■論文情報
論 文 名:Early Outcomes of Changes to Collection of Suicide Data in Japan
掲 載 紙:JAMA Network Open
著  者:Nahoko Harada, Masahide Koda, Shuhei Nomura
D O I:10.1001/jamanetworkopen.2023.47543
U R L:https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2812888

■研究資金
 本研究は、科学研究費助成事業(JP23K16359:全自治体予測モデルによるCOVID-19流行下の自殺要因の分析:社会参加/孤立と自殺の検証)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業さきがけ(JPMJPR22R8:新しい保健システム構築のための実証的な疾病負荷研究)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
2022年の集計方法変更により、自死(自殺)の理由不明の事例が減少し、理由が同定された事例が増加したことが判明~現代の自死の理由解明へ新たな示唆~

<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域
教授 原田奈穂子
(電話番号)086-235-6894

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