国立大学法人 岡山大学

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糖尿病関連腎臓病の新たな悪化メカニズムを発見!~腎臓のミトコンドリア呼吸鎖Iは新たな治療標的になる可能性~

2024年03月07日

◆発表のポイント

  • 腎臓のミトコンドリア呼吸鎖IやそのサブユニットであるNDUFS4が糖尿病関連腎臓病の悪化に強く関わっていることが分かりました。
  • マウスの腎臓ポドサイトにおいてNDUFS4を過剰発現させるとミトコンドリア機能や構造が改善し、糖尿病関連腎臓病の悪化が抑制されました。
  • 糖尿病関連腎臓病において、ミトコンドリア呼吸鎖をターゲットにし、改善効果を示した世界初の研究成果で新規治療ターゲットにつながることが期待されます。

  岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)腎・免疫・内分泌代謝内科学分野の三瀬広記客員研究員、和田淳教授、泌尿器病態学分野の荒木元朗教授らの研究グループは、アメリカのMDアンダーソン癌センター(MD Anderson Cancer Center)腎臓内科(Nephrology Section)のFarhad R. Danesh教授らの研究グループとともに、透析導入の世界最大の原因である糖尿病関連腎臓病の新たな悪化メカニズムと治療ターゲットを発見しました。本研究成果は2024年3月4日、科学雑誌『Nature Communications』の電子版に掲載されました。
 ミトコンドリアはエネルギーや酸化ストレスを調整する生体に必須の細胞内構造体ですが、それらの調整に大きく関わるのがミトコンドリア呼吸鎖複合体(呼吸鎖複合体I~Vまで存在)です。今回の研究では、糖尿病関連腎臓病のポドサイトという腎臓の重要な機能を担う細胞において、呼吸鎖複合体Iの活性やそのサブユニットNDUFS4の発現量が低下していることが分かりました。さらに、ポドサイトでNDUFS4を過剰発現させた糖尿病マウスでは、腎臓病進展のマーカーであるアルブミン尿が低下し、ミトコンドリアの内部構造維持に重要な蛋白質STOML2とNDUFS4の相互作用が改善することでミトコンドリア機能・構造が改善することを発見しました。
 これらの発見から、NDUFS4やミトコンドリア呼吸鎖Iは、糖尿病関連腎臓病における新たな治療ターゲットとなることが期待されます。

◆研究者からひとこと

近年ミトコンドリアをターゲットとした糖尿病関連腎臓病の研究は多く報告されてきていますが、臨床の現場に実用化されるような画期的な治療ターゲットの発見はまだありません。今回の研究をさらに発展させ、糖尿病関連腎臓病が治るような治療薬の開発につなげたいと思います。
三瀬広記 客員研究員

■論文情報
論文名: NDUFS4 Regulates Cristae Remodeling in Diabetic Kidney Disease
邦題名「NDUFS4は糖尿病関連腎臓病のクリステリモデリングを制御する」

掲載誌: Nature Communications
著者: Mise K, Long J, Galvan DL, Ye Z, Fan G, Sharma R, Serysheva, II, Moore TI, Jeter CR, Zal A, Araki M, Wada J, Schumacker PT, Chang BH, Danesh FR
DOI:10.1038/s41467-024-46366-w.
発表論文はこちらからご確認できます。
https://www.nature.com/articles/s41467-024-46366-w

■研究資金
本研究は、公益財団法人鈴木万平糖尿病財団「海外留学助成」、公益財団法人ウエスコ学術振興財団「長期間海外派遣滞在費助成事業」、公益財団法人金原一郎記念医学医療振興財団「上期研究助成」、公益財団法人上原記念生命科学財団「海外留学助成」、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「海外特別研究員」(いずれも研究代表者:三瀬広記)、National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases grants(R01DK078900, R01DK091310, 研究代表者:Farhad R. Danesh)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
糖尿病関連腎臓病の新たな悪化メカニズムを発見!~腎臓のミトコンドリア呼吸鎖Iは新たな治療標的になる可能性~

<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)
腎・免疫・内分泌代謝内科学
客員研究員 三瀬 広記
(電話番号)086-235-7235 (FAX番号)086-222-5214

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