国立大学法人 岡山大学

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ナノ粒子をポリマーコーティングによって線虫体内へ蓄積させることに成功!~蓄積の制御により“環境負荷の軽減”や“生体内の薬剤蓄積”を可能に~

2024年05月09日

岡山大学
筑波大学
京都大学


◆発表のポイント

  • ポリマーコーティングにより、ナノ材料の線虫体内での蓄積を制御しました。
  • 土壌モデル生物である線虫が、ナノ粒子を体内に蓄積する条件を発見しました。
  • 環境負荷の低いナノ材料や生体送達能力の高いナノ材料の開発が期待できます。

 岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(理)の藤原正澄研究教授、岡山大学異分野基礎科学研究所のゾウ ヤジュアン助教、仁科勇太教授らのグループは、筑波大学システム情報系の鹿野豊教授、京都大学大学院人間・環境学研究科の小松直樹教授、京都大学医生物学研究所の中台枝里子教授らのグループと共同で、ナノ材料の表面を親水性高分子ポリグリセロールでコーティングすることで、環境化学や細胞生物学のモデル生物として知られる線虫C. elegansCaenorhabditis elegans)の体内へのナノ材料蓄積を制御することに成功しました。本研究成果は、2024年4月20日に、科学誌「Chemosphere」のオンライン版に掲載されました。
 ナノ材料は土壌改良や水質浄化に有用な物質として近年盛んに開発されています。一方で、相当量のナノ材料が土壌や海洋河川などに流出し得るため、それらナノ材料の環境および生態系への影響が懸念されています。今回、代表的なナノ材料である酸化鉄ナノ粒子の表面をポリグリセロールという親水性高分子ポリマーにより被覆することで、土壌モデル生物である線虫体内への蓄積を抑制することに成功しました。また、ナノ粒子表面を人為的に正負に帯電させることで蓄積量が変化することも明らかとなりました。このポリグリセロールによる被覆は様々なナノ材料に適用可能なため、将来的に、ナノ材料の環境負荷を下げることが期待されます。また、逆に、線虫などにナノ粒子を蓄積させる技術の基盤ともなるため、効果的な薬剤送達・蓄積技術への展開も期待されます。

◆研究者からひとこと

私たちはナノ粒子を線虫体内に届けて、生体内のセンシングを行う研究をしていますが、ナノ粒子が届かないことに困っていました。そこから、逆の発想で、届きにくいナノ粒子の有用性に気づき、今回、環境分野への方向性を示すことができました。
藤原研究教授

■論文情報
論 文 名:Size, polyglycerol grafting, and net surface charge of iron oxide nanoparticles determine their interaction and toxicity in Caenorhabditis elegans
邦題名「酸化鉄ナノ粒子の粒径、ポリグリセロール修飾、および表面電荷がCaenorhabditis elegansとの相互作用と毒性に与える影響」

掲 載 紙:Chemosphere
著  者:Yajuan Zou, Yutaka Shikano, Yuta Nishina, Naoki Komatsu, Eriko Kage-Nakadai, Masazumi Fujiwara
D O I:10.1016/j.chemosphere.2024.142060
U R L:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0045653524009536

■研究資金
本研究は、以下の支援を受けて実施しました。
 独立行政法人日本学術振興会「科学研究費助成事業」
  基盤A・20H00335,研究代表:藤原正澄
  国際共同研究強化(A)・20KK0317,研究代表:藤原正澄
  挑戦的研究(萌芽)・22K19759,研究代表:中台枝里子(京都大学)
  基盤C・21H05599,研究代表:鹿野豊(筑波大学)
 国立研究開発法人科学技術振興機構
 「先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)次世代のためのASPIRE」
(JPMJAP2339,研究代表:鹿野豊(筑波大学))
 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
 「官民による若手研究者発掘支援事業」
 (JPNP20004,研究代表:藤原正澄)
 国立研究開発法人日本医療研究開発機構「ムーンショット型研究開発事業」
 (JP23zf0127004,研究代表:村上正晃(北海道大学))
 国立研究開発法人科学技術振興機構 未来社会創造事業 「共通基盤」領域 本格研究
 (JPMJMI21G1,研究代表:飯田琢也(大阪公立大学))
 国立研究開発法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業さきがけ
 (JPMJPR20M4,研究代表:鹿野豊(筑波大学))
 公益財団法人 山陽放送学術文化・スポーツ振興財団「研究助成」(研究代表:藤原正澄)
 公益財団法人 旭硝子財団「研究助成」(研究代表:藤原正澄)

<詳しい研究内容について>
ナノ粒子をポリマーコーティングによって線虫体内へ蓄積させることに成功!~蓄積の制御により“環境負荷の軽減”や“生体内の薬剤蓄積”を可能に~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(理)
研究教授 藤原正澄
(電話番号)086-251-7834
(FAX)086-251-7834

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