国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

オミクロン株流行期における抗体価とSARS-CoV-2感染の関連

2024年05月23日

◆発表のポイント

  • 岡山県備前市に在住または同市内に所在する団体に在籍する成人1,899人を対象として、簡易な検査キットを用いて、2カ月おきに最大5回の抗体価検査(のべ7,934検体)を実施しました。
  • 抗体価が高い方ほど、感染リスクは低くなりました。抗体価と感染リスクの関係は非線形で、抗体価が10,000AU/mL近くになると、感染リスクは大きく変わりませんでした。

 岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)疫学・衛生学分野の賴藤貴志教授と岡山大学医学部の佐々木綾子客員研究員、門脇知花客員研究員らのグループは、備前市に在住または同市内に所在する団体に在籍する成人1,899人を対象として、簡易な検査キットを用いて、2カ月おきに最大5回の抗体価検査(のべ7,934検体)を実施しました。抗体価のデータに、対象者のワクチン接種歴情報や感染情報などを連結して、オミクロン株流行期における抗体価と感染リスクの関連について分析しました。
 期間中に感染した人は423人であり、抗体価が高いグループほど、感染リスクは低くなる傾向がありました。基準となる抗体価区分(2,500 AU/mL未満)と比較して、2,500~5,000 AU/mL、5,000~10,000 AU/mL、および10,000 AU/mL以上の区分のリスクは、それぞれ0.81倍、0.51倍および0.41倍となっていました。抗体価と感染リスクは非線形で、抗体価が10,000AU/mL近くになると、それ以上に高い値の人と比較しても感染リスクは大きく変わりませんでした。これらの研究成果は4月24日、雑誌「The Journal of Infectious Diseases」に掲載されました。
 これまでも、免疫反応と感染リスクとの関連については報告されていますが、このように大規模に、幅広い年齢層の一般の方を対象にした研究はありません。私たちは、簡便な検査キットを用いて、抗体価が高くなるほど、感染リスクが下がることを明らかにすることができました。SARS-CoV-2感染の既往などの情報も踏まえながら、個人の抗体価を測定することは、今後のワクチン接種の適切なタイミングを検討する際に有用な情報になるかもしれません。

◆研究者からひとこと

 「備前市新型コロナウイルス抗体検査事業」に係る抗体検査にご参加くださった皆様、ご協力ありがとうございました!
 抗体価が高いほど感染リスクが低くなることがわかりました。今後のワクチン接種の適切な時期を決めるために、抗体価を測定することも有用かもしれません。

賴藤教授

■論文情報
論 文 名:
Antibody titers and the risk of infection during the SARS-CoV-2 Omicron phase in Bizen City, Japan
邦題名:「備前市における新型コロナウイルス感染症オミクロン期の抗体価と感染リスク」

掲 載 紙:The Journal of Infectious Diseases
DOI:10.1093/infdis/jiae207
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38656998/

■研究資金
 本研究は、「備前市と国立大学法人岡山大学との連携・協力協定」のもと、備前市からの補助金(備前市新型コロナウイルス感染症抗体検査研究事業補助金)を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
オミクロン株流行期における抗体価とSARS-CoV-2感染の関連


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)疫学・衛生学分野
教授 賴藤 貴志
(電話番号)086-235-7173 (平日9:00~17:00)
(FAX番号)086-235-7178

年度