国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

反応溶液の濃度や温度の変化のみで異なる2つの生成物を選択的に得ることに成功!~医薬品の骨格となる生成物を低環境負荷で合成可能に~

2024年06月07日

◆発表のポイント

  • これまで、アジド化合物と有機金属試薬を用いた反応では、トリアゼン誘導体を与えることが知られており、近年では、基質の選択や触媒の添加によって2級アミンを得る方法が報告されていました。
  • アジド基とヘミアミナール構造を併せ持つ新規アジドインドリン誘導体「AZIHY」を開発し、Grignard試薬との反応を行いました。
  • AZIHYをGrignard試薬と反応させる際、反応溶液の濃度や温度といった条件が変化すると、それぞれで優先して得られる生成物も異なることを見出しました。
  • 今後、AZIHYを利用した反応開拓や、生理活性物質の合成へと応用される可能性があります。

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)精密有機合成化学分野の山城寿樹大学院生(研究当時。同博士課程修了。現・北海道医療大学薬学部助教)、岡山大学学術研究院医歯薬学域(薬)精密有機合成化学分野の阿部匠講師は、アジドインドリンとヘミアミナールの両方の性質を併せ持つ新規アジドインドリン誘導体「AZIHY」を開発し、AZIHYとGrignard試薬を用いた反応において、反応条件の変化による生成物の作り分けに成功しました。本手法は、金属触媒や特殊な反応剤を必要とせず、反応溶液の濃度や温度の変化のみで異なる生成物を得ることが可能な環境負荷の低い手法です。
 本研究成果は、2024年5月30日、イギリスの科学誌「Chemical Communications」に掲載されました。これにより得られる3-アミノインドリン誘導体および2'-アミノアリール酢酸誘導体は、いずれも生理活性物質の骨格であることから、今後の医薬品開発への応用が期待されます。

◆研究者からひとこと

アジドインドリン誘導体の新たな1ページをようやく世に送り出すことができました。紆余曲折ありましたが、アジド基とヘミアミナール構造が手を取り合って、インドールの枠組みを壊しながら独自の道を歩み始めたことは大変喜ばしい思いです。
これからも、アジド基とともに「合成は爆発」の気持ちで、本当に爆発はしないよう心がけつつ進んでいければと思います。

山城博士
(現・北海道医療大学助教)

阿部講師

■論文情報
論文名: Switchable Synthesis of 3-Aminoindolines and 2’-Aminoarylacetic Acids Using Grignard Reagents and 3-Azido-2-hydroxyindolines
掲載誌: Chemical Communications
著者: Toshiki Yamashiro, Takumi Abe
DOI: https://doi.org/10.1039/D4CC01448K

■研究資金
本研究は科学研究費補助金(22K06503)の支援を受けて実施しました。山城博士は「岡山大学科学技術イノベーション創出フェローシップ(略称:OUフェローシップ)タイプB」、並びに日本薬学会長井記念薬学研究奨励支援事業の採用者であり今後の活躍が期待されています。

<詳しい研究内容について>
反応溶液の濃度や温度の変化のみで異なる2つの生成物を選択的に得ることに成功!~医薬品の骨格となる生成物を低環境負荷で合成可能に~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(薬)
講師 阿部 匠

年度