国立大学法人 岡山大学

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雄間闘争で脚を噛まれて負けた甲虫のオスは、交尾のときに踏ん張れない~ライバルに脚を噛まれたオスは残せる子の数が減る!~

2024年07月19日

◆発表のポイント

  • ダーウィン以来、メスとの交尾をめぐってオス同士が戦う行動は、ゾウアザラシやシカなど多くの生物で研究されてきました。昆虫でも角を使って相手オスを投げ飛ばすカブトムシや、大あごで相手を挟んで勝負するクワガタムシなど多くの研究事例が知られています。
  • 本研究で観察した大型甲虫であるツヤケシオオゴミムシダマシのオスは際立った武器を持っていません。雄間闘争を観察すると、相手オスの脚を噛み合う奇妙な戦いをします。しかし、なぜライバルオス同士で脚を噛み合うのかは、世界で誰もその理由を明らかにしていない謎でした。
  • 今回、ツヤケシオオゴミムシダマシの体サイズを揃えた36ペアのオス同士を戦わせて精査しました。戦いに勝ったオスと負けたオスの闘争後の行動を比べると、脚を噛まれて戦いに負けたオスはその後のメスとの交尾において、脚をうまく地面につけて踏ん張れず、残せる子供の数が有意に少ないことがわかり、脚を噛み合う理由が世界で初めて明らかとなりました。

 岡山大学大学院環境生命自然科学研究科博士後期課程2年の松浦輝尚大学院生と岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(農)の宮竹貴久教授は、ツヤケシオオゴミムシダマシ(通称:ジャイアントミルワーム)のメスをめぐるオス同士の闘争行動を研究し、オス同士が相手の脚を噛み合うという奇妙な喧嘩を行うことを発見しました。実験の結果、喧嘩の後にメスと交尾する際、ライバルオスに後ろ脚を噛まれて負けたオスは後ろ脚で踏ん張ることができなくなるため、うまく交尾姿勢を保てず残せる子供の数が圧倒的に減少することを世界で初めて実証しました。角を使って戦うカブトムシや、大あごを使って戦うクワガタは多いですが、相手オスの後ろ脚を噛む戦いは珍しく、その理由まで明らかにした研究成果は世界初となりました。
 この研究成果は7月19日午前9時(日本時間)、Springerの日本動物行動学会誌「Journal of Ethology」にオンライン掲載されます。

◆研究者からひとこと

ジャイアントミルワームのような顕著に発達した形質を持っていない種でも不思議な闘争が確認できたことや、その闘争が原因で交尾が下手になったことは驚くべきことです。また、他の目立つ形質が見られない生物でも、まだ知られていない闘争が見られる可能性が十分にあると思います。
松浦大学院生

■論文情報
論文名:Reduced fitness in losers of leg-biting male combat compared to uncontested males in Zophobas atratus
邦題名「ツヤケシオオゴミムシダマシにおいて、脚を噛まれて敗北したオスの適応度は、戦わなかったオスに比べて低下する」

掲載誌:Journal of Ethology
著者:Teruhisa Matsuura, Takahisa Miyatake
U R L:https://doi.org/10.1007/s10164-024-00818-4

■研究資金
本研究は独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費」(JP23K21343)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
雄間闘争で脚を噛まれて負けた甲虫のオスは、交尾のときに踏ん張れない~ライバルに脚を噛まれたオスは残せる子の数が減る!~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(農)
教授 宮竹貴久
(電話番号)086-251-8339 (FAX番号)086-251-8388

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