◆発表のポイント
- 岡山大学病院眼科では、ぶどう膜炎(眼炎症)・眼腫瘍の専門外来を設けて、眼科の中でもまれな疾患である炎症や腫瘍の治療を行っています。
- 結膜に見られるリンパ腫は、鮭の切り身のような赤みをもった病変を来します。局所麻酔で切除して病理検査を行うことで診断が決まります。
- 結膜にできた病変をすべて完全に切除することは難しく、部分切除となるため、病変が残ります。この残存病変に対する追加治療が必要かどうかについては、専門家の間でも意見が分かれていました。
- 今回の調査研究において、長期にわたる経過観察の結果、残存病変の多くは自然に消えることが分かり、無治療でも問題ないと言えます。
岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域(医)生体機能再生再建医学分野(眼科)の松尾俊彦教授と同学術研究院医歯薬学域(医)腫瘍病理学分野の田中健大講師は、1992~2023年に岡山大学病院を受診し「結膜リンパ腫」と診断された31人の長期経過を調査しました。
その結果、病理診断のため切除して残存病変がある場合も経過観察で自然消退することが多いことが分かりました。もし結膜病変の再発が見られた場合、再度切除して病理検査を行って診断を確認して経過観察してもよく、放射線照射を行ってもよいと考えます。
本研究成果は7月1日、日本リンパ腫学会の機関誌「Journal of Clinical and Experimental Hematopathology」に掲載されました。
目の炎症や腫瘍はまれな疾患で患者数も少ない「希少疾患」であり、今回の長期経過に関する知見は、今後の治療方針の決定などに役立つと考えらえます。
◆研究者からひとこと
岡山大学病院眼科では、ぶどう膜炎(眼炎症)・眼腫瘍や小児眼科の専門外来を長年担当しています。ぶどう膜炎や眼腫瘍は頻度が低いまれな疾患「希少疾患」なので、どのような疾患なのか、どのような経過をたどるのか、どのような治療がよいのかという疾患単位や標準治療が確立していないのが現状です。 大学病院の専門外来という立場を活かして多くの患者様を診療する機会に恵まれたことでさまざまなことが分かってきました。今後の患者様方の治療に活かしていきたいと思います。 | 松尾教授 |
■論文情報
論文名:Spontaneous regression and rare relapse after excisional biopsy in long-term observation of 31 patients with primary conjunctival lymphoma.
掲載誌:Journal of Clinical and Experimental Hematopathology
著者:Toshihiko Matsuo, Takehiro Tanaka
U R L:https://doi.org/10.1007/s10164-024-00818-4
<詳しい研究内容について>
目のまれな病気「結膜リンパ腫」の長期予後を明らかに―標準的な治療の確立や新規治療の創出に向けて―
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域
(岡山大学病院眼科)
教授 松尾俊彦