国立大学法人 岡山大学

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デジタルカメラ画像を使ったインフラ構造物の点検技術を開発

2013年12月18日

 高度成長期に建設されたトンネル、橋梁および擁壁といったインフラ構造物の老朽化問題が深刻になっており、日々の暮らしの安全・安心を確保するだけでなく、巨大地震などの大災害への備えのためにも、どのように対策をしたら良いのかの検討策をまとめることが迫られています。ところが傷んでいるインフラ構造物が今後危険な状態になるのかどうかを検討する点検作業には多大な費用と熟練の技術者の確保が必要であり、いまだ充分に実施されていないのが実情です。
 大学院環境生命科学研究科の西山哲教授が株式会社開発設計コンサルタントと共同で、市販のデジタルカメラで撮影した画像から構造物に発生している“ひび割れ”の幅の変化を高精度に計測する技術を開発し実用化することとなりました。今回開発された技術を使えば、市販のデジタルカメラで“ひび割れ”を撮影するだけで、高精度にひび割れ幅の変化を自動的に計測することができます。構造物に“ひび割れ”が見つかった場合、どれくらいの期間でどの程度ひび割れが拡がっていくのかを正確に把握する技術であり、100mの遠方から撮影した画像でも1mm以下の精度で“ひび割れ”幅の変化を捉えることが可能となります。誰にでも簡単かつ安く“ひび割れ”をモニタリングする技術の普及により、インフラ構造物の老朽化対策の進展が期待されます。
<業績 および 見込まれる成果>
 岡山大学大学院環境生命科学研究科の西山哲教授は株式会社開発設計コンサルタントと共同で、市販のデジタルカメラを使ってインフラ構造物に発生している“ひび割れ”の幅の変化を高精度で計測する技術を開発しました。これは“ひび割れ”の発生個所に特殊なガラス製の小型ターゲットを貼付しておけば、100mの遠方から撮影された画像でも1mm以下の高精度でその拡がっていく変化を捉えることができるものです。これまでは“ひび割れ”が見つかった際にそれがどのように“拡がっていく”のかを捉えることが難しく、高価なセンサを用いたり、あるいは熟練の技術者が特殊な計測機器を使って“ひび割れ”を監視していました。この技術を使えば、どこからでもデジタルカメラでひび割れを撮影するだけでその状態の変化を把握することができ、計測にかかるコストを気にすることなく、また誰にでも簡単にできることから多くの現場で使用されることが期待されます。笹子トンネルの事故以来、インフラ構造物の老朽化対策が注目されており、“ひび割れ”が拡がっていく状態を的確に把握することで、補修対策が必要な構造物または補修が必要な時期を正確に判断できるようになり、安全・安心な国土づくりの政策実現に貢献することが期待されます。なおこの技術は共同開発者の株式会社開発設計コンサルタントによって「ラクラック計測」の名前で実用化されます。

<補 足>
開発した計測技術の概要は下図に示すようなものです。技術開発のポイントは次の点にあります。
・ひび割れの周囲にターゲット(寸法5cm角程度)を貼付しておきますが、これは撮影位置と撮影の際の撮影者の姿勢を自動的に認識するためのもので、このターゲットをひび割れと同時に画像に写し込むことによって、どの位置から撮影しても高精度でひび割れ幅の変化を計測することができます。なおターゲットはそのために幾つかの円を描いた特殊な模様を持っています。
・開発した画像処理技術により遠方から撮影しても高精度にターゲットが認識できます。そのため例えば100mの遠方から撮影した画像でも1mm以下の高精度でひび割れ幅の変化を計測できます。
・計測に必要な機材はターゲットの他には、市販の安価なデジタルカメラとパソコンだけなので簡単に実施できる計測です。カメラで撮影した画像をパソコンに入れるだけで自動的にひび割れ幅が計測できるので、対象となる構造物が多くても誰にでも簡単に実施できます。また数多くのターゲットを貼ってもすぐに計測できるので、一つの構造物を精密に測ることが出来ます。



報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ先>
岡山大学大学院環境生命科学研究科 教授
(氏名)西山 哲 
(電話番号)086-251-8152
(FAX番号) 086-251-8866

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