国立大学法人 岡山大学

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笠形の巻貝類の新属アコヤザラ属の創設、およびハナザラ属の再検討―190年ぶりのタイプ標本再発見―

2024年10月02日

京都大学
岡山大学


 京都大学フィールド科学教育研究センター中野智之准教授と山守瑠奈助教、ニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワBruce Marshall博士、ロンドン自然史博物館Suzanne Williams博士、岡山大学福田宏准教授らの共同研究グループは、これまで研究例がごく少なく、長く分類も混乱したまま放置されてきた笠形の巻貝アコヤザラ ‘Roya’ eximia (G. & H. Nevill, 1869)(ニシキウズ科 Trochidae)に対し、タイプ標本の探索および解剖学的な形質の精査により、近縁と考えられるハナザラ属 Broderipia (J. E. Gray, 1847) との差異を明確化した上で、新属アコヤザラ属 Akoyazara (Nakano, Yamamori, Marshall, Williams & Fukuda, 2024) を創設しました。また、Broderipia のタイプ種バラザラ(今回和名新称) B. rosea (Broderip, 1834) およびハナザラ B. iridescens (Broderip, 1834) それぞれのタイプ標本が、原記載以来190年ぶりにロンドン自然史博物館で発掘され、レクトタイプを指定して再記載しました。
 本成果は、2024年9月30日に日豪共同刊行の国際学術誌「Molluscan Research」にオンライン掲載されました。

<研究者のコメント>
「論文が公開に辿り着くまでに必ず査読というステップがあり、査読者のコメントにはどれだけ論文を出版していても一喜一憂するものです。今回は投稿時にはそこまで注意を払っていなかったバラザラの標本は図示した方が良いとコメントをもらったものの、バラザラは日本では全く知られていなかった種なので困りました。しかしながら、改めてバラザラを捜索したところ、共著者の所属するロンドン自然史博物館のタイプ標本庫ではなく、一般の貝類標本の中から、原記載以来190年ぶりにバラザラとハナザラのタイプ標本が見つかるという大発見につながりました。査読者のコメントに感謝しています。」(中野)
「ハナザラは、大学院進学後に初めてのフィールド研究対象種となった思い入れのある貝です。その近縁なアコヤザラは当時採集例が少なく、探し出すために何度も高知一周を試みました。その結果、ハビタットをよく理解して多くのアコヤザラを採集できるようになり、このような分類学的な研究にも携わらせて頂くことができました。私の研究者ライフは、アコヤザラやハナザラの笠形の貝殻の上でころころ転がされています。」(山守)
「アコヤザラもハナザラも従来は産出記録のごく少なかった種で、近年になって山守さんたちが生態の詳細を明示するまでは、どこでどのように棲息しているのかも不明瞭でした。私など、それらの実物に野外で出逢う機会すら、いまだに得ていません。そこで今回は、ハナザラ・バラザラが記載された1834年以来の文献に徹底的に当たり直し、アコヤザラを含む3種の網羅的な異名表の作成と産出記録の確認に集中しました。その間にWilliams博士のご尽力でタイプ標本が発掘され、約2世紀前に止まったままだった時が突如として動いたのです。分類学ではありがちな展開ながら、今回の論文も思いがけない形の決着で完成に至りました。」(福田)


<論文タイトルと著者>
タイトル Akoyazara, a new genus of limpet-shaped trochids, with redescription of Broderipia J.E. Gray, 1847 (Vetigastropoda: Trochidae: Fossarininae)
著  者 Tomoyuki Nakano, Luna Yamamori, Bruce A. Marshall, Suzanne T. Williams and Hiroshi Fukuda
掲 載 誌 Molluscan Research
DOI 10.1080/13235818.2024.2403043


研究プロジェクトについて
本研究は、日本学術振興会 科研費基盤研究B課題番号23K14263「岩盤穿孔者の持つ生態系エンジニア機能の解明」(山守)により遂行されました。

<詳しい研究内容について>
笠形の巻貝類の新属アコヤザラ属の創設、およびハナザラ属の再検討―190年ぶりのタイプ標本再発見―



<研究に関するお問い合わせ先>
中野智之(なかの ともゆき)
京都大学フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所・准教授
TEL:080-5113-8948 FAX:0739-42-3515

<報道に関するお問い合わせ先>
京都大学 渉外・産官学連携部広報課国際広報室
TEL:075-753-5729 FAX:075-753-2094


岡山大学総務・企画部広報課
TEL:086-251-7012 FAX:086-251-7294

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