◆発表のポイント
- 果物・野菜収穫用AI空間センサーを用いて果樹になっている果実の位置・寸法のリモート計測屋外実証実験に成功し、果樹園での空間計測の有効性を確認しました。
- 複眼カメラ動画像を用いたAI空間画像処理を行うことで、光の入射角度や照度などの光環境の時間的変化に耐性を持つ空間計測系を構築しその性能実証に成功しました。
- 果物・野菜収穫用AI空間センサーは、収穫する果実の写真を現場の果樹園で撮影するだけで対象果実のコンピュータへの指定が完了し、操作が簡単です。
岡山大学発ベンチャーの株式会社ビジュアルサーボ(岡山大学の見浪護特命教授(研究)が起業)は、ステレオビジョンを用いた空間計測について研究を続け、これまでに、動く任意対象物の3次元位置姿勢のリアルタイム計測に成功し、泳ぐ魚の寸法計測などを行ってきました。
同社は、公益社団法人 岡山市公園協会 岡山市半田山植物園の協力を得て、2024年9月に、園内の果樹(ナツメ、ザクロ、ヘビウリ、ナタマメ、カリン、キンカン、ボケ)の果実計測実験を行いました。果物・野菜収穫用AI空間センサーを用いて、果樹になっている果実の位置・寸法のリモート計測屋外実証実験に成功し、果樹園での空間計測の有効性を確認しました。
ある時刻の複眼カメラ画像情報の比較のみに基づく画像処理は、時々刻々変化する時変光環境外乱(注1)の影響を受けないという特徴があります。撮影時の光環境は左右カメラの入力画像に同時かつ同等に反映され、過去の光環境状態から影響を受けることはないからです。今回の空間計測システムは、この「複眼光環境耐性」を利用しているため時変光環境外乱に耐性を持ちます。
この画像計測方法は、左右複眼カメラに同じ対象物が写っていれば、その位置・姿勢・寸法の計測が可能です。実証実験では、自動収穫ロボット用空間センサーとしての能力を確認するため、植物園内の立木果樹の木陰に見え隠れする果実の非接触計測実験を行いました。実験の結果、遠方写真より接近写真での寸法計測はより誤差が少なくなっていました。
また、ナツメ、ザクロ、キンカンの計測結果では、小さい果実の場合でも計測が可能なことが分かりました。
今回の実験により、(1)屋外立木果樹に実る果実を対象とした位置・寸法の非接触空間計測が可能なこと、(2)カメラ果実間の検出距離の補正後、近距離での果実寸法の平均誤差は約5[mm]以下であることが分かりました。
このことから、ロボットハンドが接近後、採取時には正確な計測が可能であり、収穫ロボット用空間センサーとして望ましい機能を備えていることが分かります。
また、果物・野菜収穫用AI空間センサーは、収穫する果実の写真を現場の果樹園で撮影するだけで対象果実のコンピュータへの指定が完了し、操作が簡単です。
株式会社ビジュアルサーボは、果物・野菜収穫ロボット用空間センサーを「全天候型空間センサーAWSS」(All-Weather Space Sensor)と命名し、発売しています。今後、果物・野菜収穫用ロボットを他社と連携して開発する予定です。収穫時に果物の熟度などの判定も考慮した仕分け作業も可能な多機能収穫ロボットの共同開発を考えています。
<詳しい研究内容について>
果物・野菜収穫用AI空間センサーの屋外実証実験に成功―立木に実っている果実の位置/寸法計測―
<お問い合わせ>
見浪 護
岡山大学特命教授(研究)
岡山大学発ベンチャー:ビジュアルサーボ stuff◎visual-servo.com
※@を◎に置き換えています。