国立大学法人 岡山大学

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土壌中の効果的な溶質拡散に成功

2013年12月18日

 本学環境生命科学研究科の森也寸志准教授は、汚染土壌の浄化や劣化土壌の修復に役立つ溶液拡散技術の開発に成功しました。本研究成果は2013年2月、『Ecological Engineering』、また『Journal of Hazardous, Toxic, and Radioactive Waste』に掲載されました。実施応用例は2013年11月の米国土壌科学国際学会で発表されました。
 土壌中の溶質移動は目に見えず、また亀裂などの不規則な構造を持つため、思うように溶液を拡散させることが出来ませんが、植物根など自然の構造を模した人工構造を作ると効果的な溶質拡散が行われ、土壌浄化、劣化土壌の修復が可能であることがわかりました。
<業 績>
 岡山大学環境生命科学研究科の森也寸志准教授は、土壌間隙構造の解析から効果的な溶質移動を実現する浸透条件を見つけ出し、これを汚染土壌の浄化や劣化土壌の修復に役立てる技術に発展させました。
 土壌間隙中の浸透現象をX線で造影すると、マクロポア・ミクロポアという二重間隙構造を持ち、水分量によってその浸透領域が劇的に変化することがわかりました(補足図1)。通常、人工的に薬液を流そうとすると図1左側のように一部しか溶液が流れないことがよく知られていますが、今回-3kPaという微弱な不飽和状態を維持すると図1右側のように土壌全体に薬液を流すことができることがわかりました。このとき通常の1/10の薬液量で汚染土壌の浄化ができることがわかりました。
 一般に環境技術はハイテクに偏りがちですが、技術の普及には低コストで環境へのインパクトが小さいことが必要で、自然に学んだこの技術は有利であると考えられます。土壌内部に溶液を効果的に拡散させるためには、耕耘などで土壌を柔らかくすることが常識ですが、昨今の強雨のために土壌が流亡するリスクが非常に高く危険です。表層を乱さずに浸透性を改善するという背反する課題を解決した点が大きな成果といえます。

<見込まれる成果>
 本成果の特徴は、自然の土壌がもともと持つ性質を巧みに利用して、溶質移動を制御するところにあり、動力源を使わずに効果的に土壌内部に溶液を導入します。さらに、植物や土壌動物によって作られた粗大間隙―マクロポアーを擬似的に土壌の中に作り、繊維を中に充填すると、通常の土壌よりずっと速く、全体に薬液を行き渡らせることが出来ました。雑草も生えにくい排水性不良地にこれを施すと一部では植生の回復が見られ、土壌の有機質化、植生回復、また二酸化炭素固定に役立つ技術となる可能性を示すデータが得られ、その将来性が見込まれます。

<補 足>

 本研究は日本学術振興会(JSPS)「最先端・次世代研究開発支援プログラム」の助成を受け実施しました(H23-25、 7670万円)。

発表論文はこちらからご確認いただけます。
  1. Mori, Y., A. Suetsugu, Y. Matsumoto, A. Fujihara and K. Suyama, Enhancing bioremediation of oil-contaminated soils by controlling nutrient dispersion using dual characteristics of soil pore structure. Ecological Engineering, 51(2), 237-243, 2013.
    http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0925857412003631
  2. Mori, Y. and Hirai, Y. , Effective Vertical Solute Transport in Soils by an Artificial Macropore System. J. Hazard. Toxic Radioact. Waste, 10.1061/(ASCE)HZ.2153-5515.0000192, 2013.
    http://ascelibrary.org/doi/abs/10.1061/(ASCE)HZ.2153-5515.0000192

取得特許情報についてはこちら
  1. 「土壌管理方法」、発明者:森 也寸志、権利者:国立大学法人島根大学、特許第4929464号 (登録2012年2月24日、出願2007年2月28日)、国内

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
(所属)岡山大学大学院環境生命科学研究科 准教授
(氏名)森 也寸志
(電話番号)086-251-8875
(FAX番号) 086-251-8875

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