◆発表のポイント
- 早期の糖尿病性腎症に対して、SGLT2阻害薬が腎機能の維持に有効であることを、世界的に新しい評価方法を用いた臨床試験で明らかにしました。
- 早期の糖尿病性腎症で、SGLT2阻害薬を内服したグループでは、内服しなかったグループと比較して、アルブミン尿が減少し、腎機能が低下せずに維持されました。
岡山大学病院新医療研究開発センターの宮本聡助教、同大の四方賢一名誉教授らの研究グループは、オランダのフローニンゲン大学医療センターのHiddo J. L. Heerspink教授らと共に考案した世界初の研究デザインを用いた臨床試験により、SGLT2阻害薬であるカナグリフロジンが早期の糖尿病性腎症の進行を抑えることを明らかにしました。本研究の成果は8月29日、科学雑誌『Kidney International』の電子版に掲載されました。
糖尿病性腎症は、透析療法が必要となる最大の原因疾患となっており、病気の進行とともに腎機能が急速に低下するため、早期から治療を行うことが重要と考えられています。しかし、早期の糖尿病性腎症に有効な治療法を明らかにするためには、大規模な臨床試験を長期間行う必要がありました。本研究では、研究に参加される方の負担を軽減しながら、有効な治療法を速やかに明らかにするために、新しい研究デザインを考案して臨床試験CANPIONE studyを実施しました。
今回の臨床試験は小規模かつ短い研究期間で行いましたが、SGLT2阻害薬を内服したグループでは、将来的な腎機能低下の指標となるアルブミン尿が減少するとともに、腎機能が維持されることが明らかになりました。
本研究成果は、臨床試験に参加される方の負担を軽減する新しい方法を世界に提唱すると共に、早期の糖尿病性腎症に有効な治療法を明らかにした重要な知見であると考えられます。
◆研究者からひとこと
CANPIONE研究の成果により、糖尿病性腎症による腎不全や透析で苦労される方が減ることを切に願っています。 | 宮本助教 | 四方名誉教授 |
■論文情報
論 文 名:A randomized, open-label, clinical trial examined the effects of canagliflozin on albuminuria and eGFR decline using an individual pre-intervention eGFR slope
「アルブミン尿と介入前の個々のeGFR の傾きを用いたeGFRの低下に対するカナグリフロジンの効果を評価した無作為化オープンラベル試験」
掲 載 紙:Kidney International
著 者:Miyamoto S, Heerspink HJL, de Zeeuw D, Sakamoto K, Yoshida M, Toyoda M, Suzuki D, Hatanaka T, Nakamura T, Kamei S, Murao S, Hida K, Ando S, Akai H, Takahashi Y, Kitada M, Sugano H, Nunoue T, Nakamura A, Sasaki M, Nakatou T, Fujimoto K, Kawanami D, Wada T, Miyatake N, Kuramoto H, Shikata K
D O I:10.1016/j.kint.2024.08.019
U R L:https://www.kidney-international.org/article/S0085-2538(24)00625-2/fulltext
■研究資金
本研究は、田辺三菱製薬株式会社から研究資金の提供を受けて実施しました。
本研究は特定臨床研究として実施しました。
<詳しい研究内容について>
世界的に新しい評価方法を用いた臨床試験により、糖尿病性腎症から腎不全への進行阻止につながる重要な知見を報告
<お問い合わせ>
岡山大学病院 新医療研究開発センター
助教 宮本 聡
(電話番号) 086-235-6504
(FAX) 086-235-6505