◆発表のポイント
- 頭頸部がん治療が、口腔機能の低下を介して、治療後のQoL(生活の質)を低下させることを証明しました。
- 頭頸部がん治療後に、歯科医院などで口腔機能を改善させるリハビリを受けると、治療後のQoLが改善できる可能性が示されました。
岡山大学学術研究院医歯薬学域(歯)予防歯科学の横井彩助教・江國大輔教授らの研究グループと、宝塚医療大学の森田学教授は、頭頸部がん治療が、口腔機能の低下を介して、がん治療後のQoLを低下させることを証明しました。
これらの研究成果は11月20日、欧州の科学雑誌「Supportive Care in Cancer」のResearch Articleとして掲載されました。
医療技術の進歩にともない、がん治療を受けた後も、仕事をしたり、趣味を楽しんだり、自分らしく生活をおくる「がんサバイバー2)」の方が増えています。これまでにも頭頸部がん治療が、がんサバイバーのQoLに影響を与えることが知られていました。今回の研究では、頭頸部がん治療が、がんサバイバーのQoLに直接影響を与えるのではなく、口腔機能の低下(口が開きにくい、しゃべりにくい)を介して、QoLを低下させることが明らかになりました。つまり、頭頸部がん治療後の、口腔機能を改善させるリハビリは、治療後のQoLを改善できる可能性が示されました。
現在歯科では、口腔機能を改善する取り組み(オーラルフレイル対策)が注目されています。本研究結果は、頭頸部がんサバイバーの方に、定期的な歯科受診を勧めるきっかけになることが期待されます。
◆研究者からひとこと
明日手術をうける入院患者さんに、「がんを治療しに来たのに、なんで歯医者に行かんといけんの?」とよく言われます。いざ歯科受診が終わると、「口の中がさっぱりした。これまたしてもらえる?」と喜んでもらえるのが嬉しいです。がん患者さんはもちろん、すべての人の生活を守れる歯科医療を実践していきたいです。 | ![]() 横井 助教 |
■論文情報
論 文 名:Relationship among cancer treatment, quality of life, and oral function in head and neck cancer survivors: A cross-sectional study
掲 載 紙:Supportive Care in Cancer
著 者:Aya Yokoi, Takayuki Maruyama, Reiko Yamanaka, Noriko Takeuchi, Daisuke Ekuni
D O I:https://doi.org/10.1007/s00520-024-09015-y
URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s00520-024-09015-y
■研究資金
本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(基盤C・21K10209・18K09909,研究代表:横井彩)の支援を受けて実施しました。また、本論文のオープンアクセス化は、文部科学省「オープンアクセス加速化事業」の取り組みの一環で実施している「インパクトの高い国際的な学術誌へのAPC支援」による支援を受けています。
<詳しい研究内容について>
頭頸部がん治療と、口腔機能の低下、QoLとの関係を明らかに~歯科受診はがんサバイバーの未来を明るくする!~
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(歯)予防歯科学分野
助教 横井 彩
(電話番号)086-235-6712
(FAX)086-235-6714