◆発表のポイント
- 沖縄県西表島と石垣島のマングローブから、カワザンショウ科(軟体動物門:腹足綱≒巻貝類)の新種ウラウチコダマカワザンショウ Ovassiminea hayasei Fukuda & Kubo, 2024 を記載しました。
- 本種の産地は現時点で5カ所のみで、棲息環境の消失や悪化によって絶滅の危機にあるため環境省と沖縄県のレッドリストで絶滅危惧II類(VU)とされ、保全措置が求められます。
- 特に石垣島の産地の近隣ではゴルフリゾート建設が計画されており、本種の個体群や棲息環境への影響が強く危惧されます。
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(農)の福田宏准教授と沖縄県海洋深層水研究所の久保弘文元所長は、貝類の新種ウラウチコダマカワザンショウ Ovassiminea hayasei Fukuda & Kubo, 2024 を記載しました。
本種は沖縄県西表島と石垣島に固有で、マングローブ湿地の砂泥底に産します。インド−西太平洋の熱帯〜亜熱帯に見られるコダマカワザンショウ属 Ovassiminea Thiele, 1927 の現生種のうち、最も北方に分布する種です。現時点でわずか5カ所のごく狭い範囲でのみ知られ、開発に伴う棲息環境の悪化が懸念されることから、環境省と沖縄県のレッドリストで絶滅危惧II類(VU)とされています。
この研究成果は2024年12月24日、日豪共同刊行の軟体動物学雑誌「Molluscan Research」にオンラインで掲載されました。
◆研究者からひとこと
カワザンショウ科はとにかく魅力的なのです。見た目もかわいらしいし、形態と棲息環境の極端な多様性は数ある貝類の中でも群を抜いています。最近30年間でこの科についての論文を世界一多く書いたのは私で、今も研究を続けていられるのはこの科との関わりなくしてありえませんでした。一昨年記載したカハタレカワザンショウは10以上の言語で報道されました。しかし今や多くの種が絶滅の淵にあり、これは私自身のアイデンティティの危機でもあります。今回の新種の存続を死守するのは私の責務というより、実存の証しであると自覚しています。 | 福田准教授 |
■論文情報
論 文 名:A new species of Ovassiminea Thiele, 1927 (Gastropoda: Truncatelloidea: Assimineidae) from the Yaeyama Islands, Okinawa, southern Japan — the northernmost record among recent species of the genus
掲 載 紙:Molluscan Research
著 者:Hiroshi Fukuda and Hirofumi Kubo
D O I:10.1080/13235818.2024.2436388
U R L:https://doi.org/10.1080/13235818.2024.2436388
<詳しい研究内容について>
巻貝の新種ウラウチコダマカワザンショウ-西表島・石垣島のマングローブに固有な絶滅危惧種-
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(農)
准教授 福田 宏
(電話・FAX)086-256-7151