国立大学法人 岡山大学

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鳥類の羽毛形成に関わる新規遺伝子「PBCF」を発見~羽毛の進化と発生のメカニズムに新たな光~

2025年01月23日

◆発表のポイント

  • ニワトリを用いた研究により、鳥類の羽の小羽枝形成に関与する新規遺伝子「PBCF」を発見しました
  • PBCFは、羽板を形成する小羽枝に特異的に発現することから、羽毛恐竜から飛行能力をもつ鳥類への進化に重要な役割を果たした可能性が示唆されます。
  • PBCFの発見は、羽の発生および進化の仕組みを解明する新たな手掛かりとなることが期待されます。

 岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(理)の竹内栄教授、相澤清香准教授、環境生命自然科学研究科(博士後期課程)の福地響紀大学院生らの研究グループは、ニワトリを用いた研究から、鳥類の羽毛形成に関与する新規遺伝子「PBCFpennaceous barbule cell factor)」を発見しました。この遺伝子は、羽毛の微細構造である小羽枝が羽枝軸に付着する過程で特異的に発現します。また、PBCFは飛翔に必要な羽板を形成する小羽枝で発現し、体温保持に寄与する柔軟な綿羽の小羽枝では発現しないことが明らかになりました。このことから、PBCFは、飛翔に適した頑丈さと柔軟性をもつ小羽枝の形成に重要な役割を果たしている可能性が示唆されます。この研究成果は、2025年1月10日に国際学術誌『Gene』オンライン版に掲載されました。
 PBCFは、分泌型および膜結合型の2種類のタンパク質をコードする遺伝子であり、細胞間接着や情報伝達を通じて羽毛の分岐構造形成に関与する可能性があります。また、この遺伝子は鳥類全般に保存されており、一部の爬虫類にも類似する遺伝子が存在しますが、両生類や哺乳類では確認できません。このことから、PBCFは羽毛恐竜から鳥類への進化過程で重要な役割を果たした遺伝子のひとつである可能性が示唆されます。
 今回の研究成果は、鳥類の羽毛進化と発生の分子メカニズムの解明に新たな手がかりを提供します。この知見は、鳥類学や進化生物学の分野に貢献するだけでなく、動物の形態形成や機能進化の一般原則の理解を深めることが期待されます。

◆研究者からひとこと

単純なつくりにも見える鳥類の羽毛ですが、その基礎構造ができてから成熟した羽毛が形成されるまでには、非常に細かなステップが積み重なって進むことが分かってきました。細胞同士がコミュニケーションを取り合い、連携してこの段階的で複雑な仕組みを作り上げていると考えると、とても興味深いです。本研究で明らかにした遺伝子以外にも似た役割を持つものが存在するのか、さらに細胞たちの「会話」を探ってみたくなる気がします。
福地 大学院生

■論文情報
論 文 名:Identification of pennaceous barbule cell factor (PBCF), a novel gene with spatiotemporal expression in barbule cells during feather development
掲 載 紙:Gene Volume 941, 2025, 149244, ISSN 0378-1119
著  者:Minori Nakaoka, Hibiki Fukuchi, Maho Ogoshi, Sayaka Aizawa and Sakae Takeuchi(M.NとH.Fは共同第一著者)
D O I:10.1016/j.gene.2025.149244
U R L:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0378111925000320

■研究資金
 本研究は、科学研究費補助金の支援を受けて実施しました(基盤研究C:17K07471、 20K06721、 23K05851)

<詳しい研究内容について>
鳥類の羽毛形成に関わる新規遺伝子「PBCF」を発見~羽毛の進化と発生のメカニズムに新たな光~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(理)
教授 竹内 栄
(電話番号)086-251-7868
(FAX)   086-251-7876

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