国立大学法人 岡山大学

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オオムギの穂先突起の長さと硬さを決める新しい遺伝機構を解明

2025年01月23日

◆発表のポイント

  • イネ科の穂先に形成される針状の突起は芒(ぼう)と呼ばれ、ムギ類では光合成を活発に行い収量や品質に大きく貢献する器官です。
  • 芒が短く曲がるオオムギshort and crooked awn (sca)突然変異体は、正常型に比べ、植物の形づくりに重要な遺伝子の発現が多数変化し、芒の細胞長や細胞数、セルロース量が減少していました。
  • sca突然変異体は、ヒストン修飾を介した遺伝子発現に関わるEMBRYONIC FLOWER 1遺伝子に異常があり、エピジェネティクスに関わる因子により芒の形成が制御される新しいしくみを解明しました。

 オオムギの芒が短く曲がったsca突然変異体は40年前に岡山大学・農業生物研究所において化学薬品処理で誘発されましたが、原因となる遺伝子は明らかになっていませんでした。今回、岡山大学大学院環境生命科学研究科(博士後期課程3年)中村光希、資源植物科学研究所の武田真教授、池田陽子准教授らの共同研究グループは、遺伝子解析によりsca突然変異はヒストン修飾を介した遺伝子発現制御因子であるオオムギEMBRYONIC FLOWER 1 (EMF1) をコードする遺伝子の異常によるものであることを解明しました。本研究はヒストン修飾因子を介して芒の形成をコントロールする新たなしくみとして注目できます。この因子の利用により、芒の長さや硬さの調節が可能になるだけでなく、下流の有用な遺伝子を発現調節し有効利用する新たな手段としての活用が期待できます。本研究成果は、2024 年 12 月 20 日に日本植物生理学会の国際誌「Plant and Cell Physiology」オンライン版で早期公開されました。

◆研究者からひとこと

 芒はイネでは収穫を妨げるものとして栽培化の過程で短くする方向に選抜されてきました。一方、ムギ類では有用なものとして長い芒が維持されてきたと考えられています。今回見つかったEMF1はイネで変異した場合とは形態が大きく異なることから、オオムギはイネとは違う独自の遺伝制御機構を持つことを示すユニークな研究といえます。
 本研究は岡山大学・資源植物科学研究所の武田グループにおいて、菊池優一さん(修士学生)および白神美津穂さん(研究員)の多数サンプルの遺伝子解析で遺伝子が同定され、その後同研究所の池田グループの参画により詳細な機能解析を加えました。約10年の地道な努力の結果、変異体を発見した資源植物科学研究所(倉敷)が中心となって論文公表に漕ぎ着けることができました!

中村大学院生

武田教授

池田准教授

■論文情報
論 文 名:SHORT AND CROOKED AWN, Encoding an Epigenetic Regulator EMF1, Promotes Barley Awn Development.
掲 載 紙:Plant and Cell Physiology, オンライン版2024年12月20日
著  者:Koki Nakamura, Yuichi Kikuchi, Mizuho Shiraga, Toshihisa Kotake, Kiwamu Hyodo, Shin Taketa, Yoko Ikeda
D O I:https://doi.org/10.1093/pcp/pcae150

■研究資金
 本研究の一部は、科学研究費補助金(No. 22K06266, 23H04747, 25450008, 23K26877)、大原奨農会共同研究助成、JST次世代研究者挑戦的研究プログラム(JPMJSP2126)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
オオムギの穂先突起の長さと硬さを決める新しい遺伝機構を解明


<お問い合わせ>
資源植物科学研究所
教授 武田 真
(電話番号) 086-434-1237(直通)
(FAX) 086-434-1249
准教授 池田 陽子
(電話番号) 086-434-1215 (直通)
(FAX) 086-434-1249

年度