国立大学法人 岡山大学

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口の中から移植後の命を守る ~口腔細菌とGVHDの新発見~

2025年01月23日

◆発表のポイント

  • 「口腔細菌」が鍵:移植後の慢性移植片対宿主病(慢性GVHD)の発症に口腔内細菌叢の乱れが大きく関与することを示しました。
  • ヒトとマウス実験で立証:ヒトの臨床データ・口腔サンプルと、マウス実験により、細菌叢の乱れや特定の病原細菌の増殖が慢性GVHD増悪につながる仕組みを解明しました。
  • 簡単で効果的:抗生剤軟膏や口腔ケアなどの患者負担が少ない方法で慢性GVHDを軽減し、免疫抑制剤のみに依存しない新たな治療法の可能性を拓きます。

 岡山大学医学部血液・腫瘍・呼吸器内科の神原由依客員研究員と岡山大学病院血液・腫瘍内科の藤原英晃講師らの研究グループは、同種造血細胞移植後に発生する慢性移植片対宿主病(慢性GVHD)を予防・軽減する新たな治療法を開発するため、口腔内細菌叢に着目した研究を行いました。これらの研究成果は、2024年12月18日に米国の血液学専門誌「Blood」に掲載されました。
 本研究では、移植患者の口腔内細菌叢の解析から、移植方法によらず細菌叢の乱れが慢性GVHDの発症と予後に相関していることを示しました。また、マウスモデルを通じて、口腔内で増殖した病原細菌がリンパ節や腸管に移行することで全身の免疫応答に影響を及ぼし、慢性GVHDの発症と増悪を引き起こす経路を立証し、さらに、口腔細菌叢のコントロールが慢性GVHDの予防・治療に有効であることを明らかにしました。
 本研究成果は、移植後の長期生存に貢献し、過度な免疫抑制剤の使用を減らす新しい治療アプローチとなる可能性があります。造血細胞移植をより安全に行うための第一歩として、今後の臨床応用が期待されています。

◆研究者からひとこと

移植患者さんへ還元できる研究にしたいという一心で取り組んできました。歯科の先生と協力し、移植期間を通じた口腔ケアが重要であると再認識できる研究成果となりました。
神原由依
客員研究員

藤原英晃 講師
本研究が骨髄移植後の慢性GVHDで困っている患者さんが減ることに少しでも貢献できればと考えています。本研究で得られた内容を臨床にフィードバックしたいと考えています。

■論文情報
論 文 名:Oral Inflammation and Microbiome Dysbiosis Exacerbate Chronic Graft-versus-host Disease
掲 載 紙:Blood
著  者:Yui Kambara, Hideaki Fujiwara, Akira Yamamoto, Kazuyoshi Gotoh, Shuma Tsuji, Mari Kunihiro, Tadashi Oyama, Toshiki Terao, Ayame Sato, Takehiro Tanaka, Daniel Peltier, Keisuke Seike, Hisakazu Nishimori, Noboru Asada, Daisuke Ennishi, Keiko Fujii, Nobuharu Fujii, Ken-ichi Matsuoka, Yoshihiko Soga, Pavan Reddy, Yoshinobu Maeda
D O I:https://doi.org/10.1182/blood.2024024540

■研究資金
 本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業(課題番号:JP20K22901およびJP21H02904、研究代表:藤原英晃)、研究助成金(課題番号:JP23K15301、研究代表:山本晃)、ヤクルトバイオサイエンス財団(研究代表:藤原英晃)、武田科学振興財団(研究代表:藤原英晃)、米国国立心肺血液研究所(課題番号:K08HL157619、研究代表:Daniel Peltier)、および米国National Marrow Donor Programが資金提供するAmy Strelzer Manasevit研究プログラム(研究代表:Daniel Peltier)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
口の中から移植後の命を守る ~口腔細菌とGVHDの新発見~


<お問い合わせ>
岡山大学病院 血液・腫瘍内科
講師 藤原英晃
(電話番号)086-223-7151
(FAX)086-232-8226

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