国立大学法人 岡山大学

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骨代謝から着想!重金属を高効率に除去する新しいデトックス材料を開発!体内の解毒剤として期待

2025年01月29日

◆発表のポイント

  • 摂食の過程で侵入する重金属を効率的に除去する新規経口医用材料を開発しました。
  • この材料は骨構成成分であるリン酸カルシウムを用いたものであり、骨代謝過程における分解と安定化から着想を得たものです。
  • 消化管内の重金属を効率的に回収し、体外に排出することが可能です。

 岡山大学学術研究院医歯薬学域(歯)生体材料学分野の松本卓也教授、岡田正弘准教授(現東北大学特任教授)、Ahmad Bikharudin 大学院生らのグループは、骨構成成分であるリン酸カルシウムを用いることで消化器系に侵入した Cd(カドミウム)など重金属を効率的に除去できることを明らかにしました。この研究成果は1月24日、英科学誌「Journal of Hazardous Materials」(インパクトファクター:12.2)のオンライン電子版で公開されました。
 Cd は公害病として広く知られる「イタイイタイ病」(骨軟化症)の原因物質であり、火山や亜鉛鉱山に近い地域などでは土壌に多く含まれる重金属です。日本以外の国でも同様疾患の発症が認められており、また別のアジア圏の国では農地の 15%以上において基準値以上の Cd を含むという報告もあります。土壌の Cd は穀物から人体に侵入しやすく、地域や食生活によって曝露の程度が異なります。米を主食とするアジア系人種は特にその対応が重要であり、日常的に摂取される Cd を効率的に除去し、体内沈着を防ぐことは重要な課題です。
 研究グループは骨組織の成長過程において骨を構成する無機結晶(リン酸カルシウム)が溶解、分解と安定化を繰り返し、骨形態や骨機能を維持するという働きから、消化器官内でのリン酸カルシウムを用いた Cd デトックスを着想しました。この材料を合成、顆粒化し Cd 含有水を飲ませたマウスに食べさせたところ、リン酸カルシウムは胃内の低 pH で溶解し、小腸内の中性 pH で再結晶析出を示し、この過程において活性炭よりも高効率、100μg/ml という高濃度の Cd であってもほぼ 100%除去できること、体内組織への Cd 沈着を抑制できることを明らかにしました。

◆研究者からひとこと

 デトックスというと活性炭やキレート剤といったイメージがありますが、それら材料よりも高効率で重金属除去できる材料です。元々が骨の成分であり、体への安全性も高いです。手軽に服用できる解毒剤としての活用が期待できます。
松本教授

■論文情報
論 文 名: Co-precipitating Calcium Phosphate as Oral Detoxification of Cadmium
邦題名「リン酸カルシウム共沈殿を活用した消化管内カドミウム除去」

掲 載 誌: Journal of Hazardous Materials
著 者: Ahmad Bikharudin, Masahiro Okada, Ping-chin Sung, Takuya Matsumoto
D O I: 10.1016/j.jhazmat.2025.137307
U R L:https://doi.org/10.1016/j.jhazmat.2025.137307

■研究資金
 本研究は、独立行政法人日本科学技術振興機構(JST)「階層性自己組織化複合材料デザイン」(分解・劣化・安定化の精密材料科学領域、JPMJCR22L5,研究代表:松本卓也)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金(JP21H03123, JP22H03274, JP23H00235)の支援を元に実施しました。

<詳しい研究内容について>
骨代謝から着想!重金属を高効率に除去する新しいデトックス材料を開発!体内の解毒剤として期待


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(歯) 教授 松本 卓也
(電話番号)086-235-6667 (FAX番号)086-235-6669

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