国立大学法人 岡山大学

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次世代アルミニウムイオン電池革命!安全・低コスト・高容量を実現する正極炭素材料を解明

2025年03月05日

岡山大学
星和電機株式会社

◆発表のポイント

  • 比表面積・平均細孔径・全細孔容積が異なる多孔質炭素(PC: Porous Carbon)を正極とするアルミニウムイオン電池で、平均細孔径の制御により放電容量が向上する可能性を示しました。
  • 高い放電容量を実現するため、従来の比表面積重視の設計とは異なり、最適な細孔径を維持しつつ比表面積を増やす新たな設計視点を提案しました。

 岡山大学大学院環境生命自然科学研究科(工)の陳逸楓 大学院生、同大学学術研究院環境生命自然科学学域の鈴木弘朗 研究准教授、西川亘 助教、林靖彦 教授等は、星和電機株式会社の梅澤成之 博士(同大大学院自然科学研究科博士後期課程修了)と共同で、多孔質炭素の平均細孔径制御とアルミニウムイオンの吸脱着反応によって、安定に充放電できる高容量のアルミニウムイオン電池(AIB: Aluminum Ion Battery)に必要な正極PC材料の細孔物性の同定に成功しました。
 今回の研究成果は、2025年2月12日に英国王立化学会(Royal Society of Chemistry)の学術雑誌「Journal of Materials Chemistry A」に掲載(First published)されました。
 リチウムイオン電池(LIB: Lithium Ion Battery)は幅広く活用されていますが、資源問題、環境問題、安全性などの課題を抱えており、LIBに代わる次世代電池技術の開発競争が加熱しています。本研究グループは、資源が豊富で、低コスト、安全性が高く、高速充電が可能で高い理論容量が期待されるため、金属負極にアルミニウムを用いた電池(AIB)の研究開発を実施しています。AIBの正極材料の候補として、資源が豊富で、低い製造コストという両方の条件を満たす多孔質炭素PCの利用に注目していますが、一方でPCを用いたAIBは放電容量が低いという課題を抱えています。そこで、異なる細孔物性(比表面積・平均細孔径・全細孔容積)を有するPCを正極として使用することで、平均細孔径が放電容量に大きく影響することを明らかにしました。最適な平均細孔径と大きな比表面積をもつPCを選択することで、AIBの放電容量を増大させることが可能となりました。この研究成果から、高容量のAIB実現に向け、従来の比表面積重視の設計とは異なる新たな視点を取り入れた電極設計の知見を提供しました。

◆研究者からひとこと

 本研究は、多孔質炭素正極の設計指針となり得る成果で、次世代高容量アルミニウムイオン電池の実現に寄与します。今後も持続可能なエネルギー社会の実現に向けて、安全・安心の蓄電デバイスの研究を進めていきます。(陳)
 2価金属イオン電池の開発が加速する一方で、3価金属イオン電池の研究は未だ大きな壁に直面しています。今回、数々の困難を乗り越えた革新的な成果は、学生の発想と挑戦から生まれたものです。今後、水系および固体電解質を用いたアルミニウムイオン電池(AIB)の実現を目指し、国際共同開発を視野に入れたポストリチウムイオン電池の研究を牽引する研究開発拠点を築いていきます。(林)

陳逸楓 大学院生

林靖彦 教授

■論文情報
論 文 名:Enhanced capacity of aluminum-ion batteries by adjusting the average pore size of the porous carbon cathode
掲 載 紙: Journal of Materials Chemistry A
著  者: Yifeng Chen*, Hiroo Suzuki, Shu Fukumoto, Chiyu Nakano, Takeshi Nishikawa, Shigeyuki Umezawa, and Yasuhiko Hayashi*
D O I: 10.1039/D4TA08671F
U R L: https://doi.org/10.1039/D4TA08671F

■研究資金
 筆頭著者の陳逸楓は、JST SPRING(JPMJSP2126)の支援を受けて本研究を実施しました。

<詳しい研究内容について>
次世代アルミニウムイオン電池革命!安全・低コスト・高容量を実現する正極炭素材料を解明

<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院 環境生命自然科学学域
教授 林 靖彦
(電話番号)086-251-8230
(FAX)086-251-8230(林)

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