◆発表のポイント
- 腎臓の構造を試験管内で再現した「ミニ腎臓」を使って、薬が腎臓に与える影響を評価する方法を開発しました。
- この方法を用いて、小林製薬の健康被害が報告された製品ロットの「紅麹コレステヘルプ」が腎臓に直接ダメージを与える可能性があることを明らかにしました。
- 本評価法の研究が進めば、動物実験に頼ることなく薬の安全性を評価できる新たな技術として実用化が期待されます。
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)腎・免疫・内分泌代謝内科学の辻憲二助教の研究グループは、ラットの腎臓細胞から作った「ミニ腎臓(腎臓オルガノイド)」を活用し、薬が腎臓に与える影響を調べる方法を開発しました。この方法を使って、小林製薬のサプリメント「紅麹コレステヘルプ」を摂取した人が腎障害を発症した原因を調べたところ、健康被害が報告された製品の一部が、「ミニ腎臓」に対して毒性を持つことが確認されました。
これらの研究成果は2月20日に国際雑誌「American Journal of Nephrology」のBrief Report Articleとしてオンライン先行公開されました。
このサプリメントに含まれる成分が腎臓の細胞に直接ダメージを与え、腎障害を引き起こす可能性が考えられます。今後は、被害情報のあるロットにおいて検出が報告されている化合物「プベルル酸」を用いた解析を進めることで、より詳しい原因の解明につながる可能性があります。
さらに、この研究が進むことで、動物実験を行わずに腎臓への影響を調べる新しい方法として、薬の安全性評価や新しい薬の選別への活用が期待されます。
◆研究者からひとこと
動物を大切にする考え方から、「3R」と呼ばれる取り組みが広がっています。これは、動物実験を減らす(Reduction)、代わりの方法を使う(Replacement)、より負担の少ない方法に改善する(Refinement)という考え方です。我々は、腎臓の構造を再現したミニ腎臓を使って、動物を使わずに薬が腎臓に与える影響を調べる方法の実現を目指しています。 本評価法の研究をさらに進めて、早く実用化できるように頑張ります。 | ![]() 辻 助教 |
■論文情報
論 文 名:Supplement-induced acute kidney injury reproduced in kidney organoids
掲 載 紙:American Journal of Nephrology
著 者:Hiroyuki Nakanoh, Kenji Tsuji, Kazuhiko Fukushima, Soichiro Haraguchi, Shinji Kitamura, Jun Wada
D O I:10.1159/000544795
U R L:https://karger.com/ajn/article/doi/10.1159/000544795/922043/Supplement-induced-acute-kidney-injury-reproduced
■研究資金
本研究は、公益財団法人ウエスコ学術振興財団「研究活動費助成事業」と独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(基盤C・24K11411,研究代表:辻憲二)の支援を受けて実施しました。
<詳しい研究内容について>
「ミニ腎臓」で薬の腎毒性を評価!~動物実験に頼らない新たなアプローチへ~
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)
腎・免疫・内分泌代謝内科学
助教 辻 憲二
(電話番号)086-235-7235
(FAX) 086-222-5214