国立大学法人 岡山大学

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原始紅藻Galdieria sulphuraria光化学系I集光性色素タンパク質超複合体の立体構造解析

2025年05月20日

国立大学法人静岡大学
国立大学法人岡山大学
国立大学法人京都大学
国立研究開発法人理化学研究所

◆研究のポイント

  • 原始紅藻Galdieria sulphuraria由来光化学系I集光性色素タンパク質超複合体(PSI-LHCI)の立体構造を2.19Åの分解能で解明しました。
  • PSIの電子伝達鎖において、通常のフィロキノンが検出されず、ベンゾキノン様分子への適応が新たに見出されました。
  • 紅藻PSI-LHCIのLHCI結合部位や相互作用の進化的特徴を明らかにし、祖先型紅藻のPSI-LHCI構造を推定しました。

【研究概要】
 静岡大学農学部の長尾遼准教授は、岡山大学の加藤公児准教授(特任)、沈建仁教授、京都大学の熊沢穣博士課程生、伊福健太郎教授、理化学研究所の堂前直ユニットリーダーらと共に、極限環境に適応した原始紅藻Galdieria sulphuraria NIES-3638由来PSI-LHCIの立体構造をクライオ電子顕微鏡による単粒子構造解析により2.19Åの分解能で明らかにしました。その結果、本種のPSI-LHCIはPSI単量体と7つのLHCIサブユニット(LHCI-1~7)で構成されており、進化的に保存された結合様式を持つことが明らかになりました。また、PSIのA1電子受容体として一般的に見られるフィロキノンが検出されず、代わりにベンゾキノン様分子が存在することが示唆されました。さらに、PSIに結合するLHCIの分子系統解析の知見をもとに、本種が祖先的な紅藻の特徴を保持しつつ進化してきたことが示されました。本研究の成果は、紅藻におけるLHCI結合パターンの保存性と多様性を解明し、特に、RedCAPというタンパク質がLHCIの一部を構成し、PSIと特異的に相互作用していることを明らかにしたもので、紅藻の光合成システムの進化的適応を理解する上で重要な知見を提供しました。なお、本研究成果は、2025年5月16日14:00(米国東部時間)に、国際雑誌「Science Advances」に掲載されました。

研究者コメント
静岡大学農学部
准教授・長尾遼(ながおりょう)

紅藻の光化学系Iがどのように進化し、他の光合成生物と異なる特性を獲得したのかを明らかにすることが本研究の目的でした。紅藻の祖先がどのような生物だったのか不明なため、その祖先に最も近いといわれている原始紅藻G. sulphurariaのPSI-LHCI構造を高解像度で解析し、PSI-LHCIの分子進化の過程を理解する上で重要な知見を得ることができました。光合成生物の適応進化を考える上で興味深い発見となりました。


■論文情報
掲載誌名: Science Advances
論文タイトル: Structure of a photosystem I supercomplex from Galdieria sulphuraria close to an ancestral red alga
著者: Koji Kato, Minoru Kumazawa, Yoshiki Nakajima, Takehiro Suzuki, Naoshi Dohmae, Jian-Ren Shen, Kentaro Ifuku, Ryo Nagao
DOI: 10.1126/sciadv.adv7488

<詳しい研究内容について>
原始紅藻Galdieria sulphuraria光化学系I集光性色素タンパク質超複合体の立体構造解析


<お問い合わせ>
(研究に関すること)
静岡大学農学部
准教授・長尾遼(ながおりょう)
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