国立大学法人 岡山大学

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指定難病“特発性多中心性キャッスルマン病”の病態形成に深く関わる遺伝子群を同定

2025年05月22日

◆発表のポイント

  • 指定難病“特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD)”の一亜型である“iMCD-TAFRO”はしばしば致死的な経過をたどる、まれなリンパ増殖性疾患です。
  • この疾患は近年まで確立された診断基準が存在せず、病態の解明が進んでいません。
  • 病理組織所見と遺伝子発現の解析を組み合わせ、病態に深く関与する遺伝子群を同定しました。
  • 本成果は、iMCD-TAFROの新規治療法の開発に大きく寄与すると期待されます。

 岡山大学大学院保健学研究科分子血液病理学の原武朋加大学院生、学術研究院保健学域の西村碧フィリーズ講師、佐藤康晴教授らの研究グループが、特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD)の病態に深く関与する遺伝子群としてPI3K-Aktシグナル伝達経路を同定しました。本研究は4月23日、「Modern Pathology」のオンライン電子版に公開されました。
 iMCDは、全身のリンパ節の腫れや発熱といった全身症状を引き起こす原因不明の疾患です。中でも、iMCD-TAFROは血小板減少・胸腹水貯留・発熱・骨髄線維症・腎機能障害・臓器腫大といった重篤な症状を呈し、死に至ることもあります。この疾患の原因や病態は不明で、確立された治療法もないのが現状です。今回同定された遺伝子群が、iMCD-TAFROの研究に関わる世界各国の多くの関係者に広く認知されることにより、より深い研究が行われることで、詳しい病態解明やより良い治療法の開発につながり、この疾患で苦しむ方々の役に立つことが期待されます。

◆研究者からひとこと

iMCDは非常にまれで不明な点が多く、未だ研究の余地が多く残されている疾患です。今回同定した遺伝子群を多くの方々に知っていただくことで、よりこの疾患に関する研究・理解が加速していくことを願っています。
原武大学院生

西村講師
本研究内容がきっかけとなり、最適な治療法開発を含めた研究が進むことで、iMCD-TAFROで苦しむ患者さんおよびそのご家族の希望となることを願います。

■論文情報
論 文 名:The involvement of PI3K–Akt signaling in the clinical and pathologic findings of iMCD-TAFRO and NOS subtypes.
掲 載 紙:Modern Pathology
著  者:Tomoka Haratake, Midori Filiz Nishimura, Asami Nishikori, Michael V Gonzalez, Daisuke Ennishi, You Cheng Lai, Sayaka Ochi, Manaka Tsunoda, David C Fajgenbaum, Frits van Rhee, Shuji Momose, Yasuharu Sato.
D O I:10.1016/j.modpat.2025.100782
U R L:https://doi.org/10.1016/j.modpat.2025.100782

■研究資金
 本研究は、科学研究費補助金(23K1447605, 24KK0172, 25K02476)と厚生労働科学研究費補助金(23FC1025)、日本医療研究開発機構 難治性疾患実用化研究事業「統合レジストリを活用したキャッスルマン病・TAFRO症候群における精密医療基盤の構築を目指す実用化研究」の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
指定難病“特発性多中心性キャッスルマン病”の病態形成に深く関わる遺伝子群を同定


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院保健学域 分子血液病理学
教授 佐藤康晴
(電話番号)086-235-7424
(FAX)086-235-7156

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