◆発表のポイント
- 岡山大学腎泌尿器科では、腎盂・尿管がんの方に対して腎摘出を行うことなく、内視鏡下にレーザーを用いて腎温存・低侵襲手術を行っています(透析回避)。
- 最新のレーザーと高性能の内視鏡を駆使し、治療成績も向上しています。
- 腎盂・尿管がんの患者さんは高齢の方が多く、腎機能障害など複数の合併症を持たれている方も多いです。本治療により、腎機能保持とがんの根治を両立させることを目指します。
腎盂・尿管がんは発見が遅れることも多く、早期・進行がんに関わらず腎尿管全摘手術、という腎臓と尿管を全て摘出する治療が標準治療として本邦・世界で広く行われています。岡山大学学術研究院医療開発領域(腎泌尿器科)の片山聡助教(特任)と同大学学術研究院医歯薬学域(医)腎泌尿器科学の荒木元朗教授を中心とするグループは腎臓を摘出することなく、ツリウムレーザー※1とホルミウムレーザー※2を併用し腫瘍を焼灼、根治を目指す”腎温存手術”に積極的に取り組んでいます。
同治療に関する研究が、2022年5月に「European Urology Focus」、2022年11月9日に「International Journal of Urology」に掲載されました。
欧米との多施設共同研究を行い、岡山大学独自の低リスク(がん進行リスクの小さい)患者さんの同定基準を設け、その適応に当てはまる患者さんに本治療を行い、腎臓の温存とがんの根治を目指します。
また、腎臓が一つしかない方、高度腎機能障害を有する方などにおいて、腎臓を一つ摘出することにより透析生活を行わざるを得ない場合があります。そのような方の場合、腎臓・尿管を摘出してがんが治っても、透析を行うことで生活の質は低下し、寿命も縮めてしまうリスクがあります。そのような方には、腎臓を摘出しないことによる恩恵を受けられるよう本治療を行っていきます。
腎盂・尿管がんは高齢の方も多く、この腎温存手術は今後推し進めていくべき治療であり、本邦での普及に向けさらなる研究、普及活動を続けていきます。
◆研究者からひとこと
私は、小さな尿管がんの患者さんが腎臓も一緒に摘出される標準治療を疑問に思っていました。腎臓をとらずにがんの治療はできないものかと考え、この治療を始めました。腎盂・尿管がんの患者さんが、幸せに長生きできるよう、活動を続けていきます。 | ![]() 片山助教(特任) |
■論文情報
論 文 名①:Accuracy and Clinical Utility of a Tumor Grade- and Stage-based Predictive Model in Localized Upper Tract Urothelial Carcinoma
掲 載 紙:European Urology Focus
著 者:Katayama S, Araki M, et al.
D O I:10.1016/j.euf.2021.05.002.
U R L:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2405456921001541?via=ihub
論 文 名②:Biological and prognostic implications of biopsy upgrading for high-grade upper tract urothelial carcinoma at nephroureterectom
掲 載 紙:International Journal of Urology
著 者:Katayama S, Araki M, et al.
D O I:10.1111/iju.15061.
U R L:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/iju.15061
<詳しい研究内容について>
レーザー治療で透析回避!~腎盂がん・尿管がんを「腎臓を摘出せず」に治療~
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医療開発領域(岡山大学病院)腎泌尿器科
助教(特任) 片山 聡
(電話番号)086-235-7287
(FAX番号)086-231-3986