◆発表のポイント
- 子宮摘出を余儀なくされていた子宮頸がんの患者さんを対象に、子宮を摘出することなくがんを治癒させるための新たな治療法の開発を始めました。
- 手術前に抗がん剤を投与することで、再発のリスクを抑えながら安全に縮小手術を実施することが期待できます。
- 治療終了後、再発がないことが確認できれば妊娠を目指すことが可能になります。
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)周産期医療学講座の長尾昌二教授(特任)、同学術研究院医療開発領域(岡山大学病院・産科婦人科)の依田尚之助教、岡山大学病院産科婦人科の谷岡桃子医員の研究グループは、術前の抗がん剤投与で腫瘍を縮小させた後に子宮頸部円錐切除術、腹腔鏡下骨盤リンパ節郭清を行うことで、これまで子宮摘出が必要とされてきたIB2期、IB3期(転移がなく、2cm以上のサイズの腫瘍を有する)の子宮頸がんの患者さんの子宮を温存する新たな治療法の開発を始めました。
ヨーロッパでは散発的に同様の試みが行われていますが、きちんとした臨床研究として安全性を担保した上で実施するのは世界初です。この治療法が確立すれば、子宮頸がんに罹患した若年の患者さんが将来の妊娠の機会を失うことを防ぐことができるようになります。
2025年5月27日、学内の倫理審査委員会で承認され、6月1日より研究に参加する患者さんの募集を開始しました。
◆研究者からひとこと
10年以上前から取り組んできた研究がやっと患者さんに届けられる段階になりました。将来の妊娠を希望される子宮頸がんの患者さんに希望を届けられるよう頑張りたいと思います。 | ![]() 長尾教授(特任) |
子宮頸がんを治療しつつ、妊娠の可能性を残す――そんな選択肢が現実のものとなることを目指しています。がんと診断されても『子どもを持ちたい』という若年の子宮頸がん患者さんが希望を諦めずにすむ未来を拓いていきたいと考えています。 | ![]() 依田助教 |
長尾先生から最初に研究のお話をお聞きした時は、そんなことが可能なのだろうかと正直懐疑的でした。ですが、これまで行われたさまざまな研究を調べていくうちに、とても理にかなった治療なのだと考えるようになりました。妊娠を希望される患者様の選択肢の一つとなることを期待します。 | ![]() 谷岡医員 |
■論文情報
論 文 名:Phase II study of a new multidisciplinary therapy using once every 3 week carboplatin plus dose-dense weekly paclitaxel before and after radical hysterectomy for locally advanced cervical cancer
掲 載 紙:Int J Clin Oncol
著 者:Nagao S, Yamamoto K, Oishi T, Yamaguchi S, Takehara K, Shimada M, Kigawa J.
D O I:10.1007/s10147-020-01787-7.
■研究資金
本研究は、岡山大学臨床研究支援制度の支援を受けて実施しています。
<詳しい研究内容について>
子宮を切除することなく子宮頸がんを治す取り組み~治療終了後の妊娠が可能に~
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)周産期医療学講座
教授(特任) 長尾 昌二
(電話番号)086-235-7320