◆発表のポイント
- 移動しないと考えられていた動原体が、タマネギでは頻繁に移動することを発見しました。
- ニンニクが、これまで報告された中で最も大きい動原体をもつことが明らかになりました。
- これらの発見は、動原体の常識を塗り替え、他の生物の動原体研究にも新しい視点を与えます。
岡山大学学術研究院先鋭研究領域(資源植物科学研究所:大麦・野生植物資源研究センター)の長岐清孝准教授と学術研究院環境生命自然科学学域(農)の牛島幸一郎教授らの共同研究グループは、ネギ、タマネギ、ニンニクの多くの系統を用いたセントロメア(動原体の存在する染色体上の位置)の解析により、(1)タマネギのセントロメアが頻繁に移動していること、(2)ニンニクは、これまで報告された中で最大のセントロメアをもつことを明らかにしました。
これらの研究成果は6月10日、米国の植物科学雑誌「The Plant Cell」のResearch Articleとしてオンラインで公開されました。
セントロメアは、「くびれ」として染色体の形を表記する際のランドマークとして使われ、それぞれの種で固有の位置に存在し不動であると考えられてきました。ところが、本研究で、タマネギの動原体は移動し続けており、品種間のみならず、個体間でも違う位置に存在することが明らかになりました。この発見は、セントロメア研究分野において、地動説のようなインパクトを持ちます。高校生物の染色体観察の教材として馴染み深い生物に、このような新発見が隠されていたのは驚きです。
今後は、セントロメアが移動する原因や「他の生物では移動するのか?」、そして「ニンニクよりも大きなセントロメアをもつ生物はいるのか?」を明らかにしていきます。将来的には、セントロメアを人為的に動かすことによる品種改良も可能かもしれません。
◆研究者からひとこと
学生の頃から「セントロメア(動原体)は、ランドマークだから動かない(”動”原体でも動かない)」と教わり、その北極星のような存在のセントロメアが動きまくっているのを発見した時は、定説を覆すこの結果に対して、思わず「E pur si muove(それでも、それは動いている)」と言いたくなりました。 | ![]() 長岐准教授 |
■論文情報
論 文 名:Pancentromere analysis of Allium species reveals diverse centromere positions in onion and gigantic centromeres in garlic
掲 載 紙:The Plant Cell
著 者:Kiyotaka Nagaki, Koichiro Ushijima, Takashi Akagi, Keisuke Tanaka and Hisato Kobayashi
D O I:https://doi.org/10.1093/plcell/koaf142
U R L:https://academic.oup.com/plcell/advance-article/doi/10.1093/plcell/koaf142/8159937
■研究資金
本研究は、東京農業大学生物資源ゲノム解析センター生物資源ゲノム解析拠点共同研究の支援を受けて実施しました(課題番号H25-12)。
<詳しい研究内容について>
タマネギの動原体は、動き回っている〜染色体のE pur si muove〜
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院先鋭研究領域
(資源植物科学研究所:大麦・野生植物資源研究センター)
准教授 長岐 清孝
(電話番号)086-434-1208
(FAX)086-434-1208