◆発表のポイント
- 全国的に安全な施行が課題となっている無痛分娩における、人員不足と安全管理を同時に解決するための遠隔医療を行う研究を開始しました。
- 無痛分娩の重要な処置である硬膜外麻酔を必ず麻酔科医が行い、その後の管理も必ず麻酔科医が行うことを原則としています。
- 麻酔科医がベッドサイドに不在の場合でも、遠隔医療システムを用いてリアルタイムで妊婦さんの診察および治療介入が可能になります。
岡山大学病院麻酔科蘇生科は、開業産院である三宅医院グループ三宅医院(岡山市南区)、PHCホールディングス株式会社(本社:東京都千代田区)傘下のウィーメックス株式会社(本社:東京都渋谷区)と協力し、遠隔医療システムを用いて妊婦さんに安心して無痛分娩を施行するシステムの共同研究を開始しました。日本では過去に、無痛分娩における死亡事故が報告されており、安全な無痛分娩の管理体制の構築が求められています。そのためには、専門家である麻酔科医が硬膜外麻酔を施行し、薬剤のコントロールを含めた管理を行う体制が必要ですが、麻酔科医不足により全国的な無痛分娩の普及率は低いままです。
本研究では、無痛分娩希望の妊婦さんが入院した場合、岡山大学病院の麻酔科医が三宅医院に出向き、硬膜外麻酔を施行します。安全な硬膜外麻酔の導入が確認され麻酔が安定したら、麻酔科医は岡山大学病院へ戻り、通常業務を行いながら、ウィーメックス社提供の遠隔医療システム「Teladoc HEALTH」を用いて定期的に妊婦さんの診察を行います。分娩の進行に合わせた疼痛コントロール、呼吸循環に問題ないか、その他硬膜外麻酔に付随する問題点などを診察し、問題があれば解決します。麻酔科医が直接介入するべき場合は、三宅医院を再度訪問し、治療を行います。
まずは患者満足度の向上がみられるかを本研究で検討し、その後安全性を検討する研究に発展させる計画です。
◆研究者からひとこと
無痛分娩の安全な施行に麻酔科医が果たす役割は大きいですが、現状は人手不足により全ての妊婦さんの要望に応えられていないと考えています。麻酔科医が常時ベッドサイドにいなくても、遠隔医療を導入することで妊婦さんの安全が担保できるようになれば、無痛分娩を安全に行える施設が増え、妊婦さんが住み慣れた地域で安心してお産を行えるようになるのではと考えています。 | ![]() 金澤 講師 |
<詳しい内容について>
岡山大学・三宅医院・ウィーメックスの3者で無痛分娩の現場における課題解決に向けた共同研究を開始!
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院 医療開発領域 小児麻酔科
講師 金澤 伴幸
(電話番号)086-235-7778