◆発表のポイント
- 心停止時のAED使用で、全自動型AEDは一般市民の「ボタンを押すためらい」を軽減しました。
- 一般市民は全自動型AEDを好み、医療従事者は半自動型AEDを選ぶ傾向にあることが分かりました。
- 全自動型AEDの普及と講習内容の見直しが、今後の救命率向上に必要です。
心停止から命を救うには、一般市民による迅速な初期対応と、電気ショックを行うAED(自動体外式除細動器)の早期使用が欠かせません。AEDには、救助者がボタンを押す「半自動型」と、機械が自動でショックを行う「全自動型」の2種類があります。「全自動型」は2021年から日本で導入され、公共施設で広がりつつありますが、まだ一般市民にはなじみが薄く、非医療者である一般市民が使う際の使用感や心理的負担を比較した調査はありませんでした。
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)地域二次救急・災害医療推進講座の野島剛講師(特任)と同学域救命救急・災害医学の中尾篤典教授らの研究グループは、国内初となる両タイプの使いやすさ比較調査を実施。その成果は国際医学誌『Internal Medicine』に掲載されました。
2021~2022年に行われた心肺蘇生講習で、443人(医療従事者47人、一般市民396人)が両タイプを体験。一般市民は「全自動型」を好み、ボタンを押すためらいが減る傾向が見られました。一方、医療従事者は、使い慣れた「半自動型」を選ぶ傾向があり、「全自動型」は危険と感じる声もありました。
今回の研究は、一般市民にとっては「全自動型」AEDが使いやすく、救命のスピードと成功率を高める可能性を指摘しました。しかし、現状の心肺蘇生講習で「全自動型」の教育がほとんど行われていない課題もあり、誰もが迷わずAEDを使える社会へ向け、講習内容の見直しを提言しています。
◆研究者からひとこと
心停止では、ためらわず迅速に対応できるかで、その人の運命は大きく変わります。全自動型AEDは、機械が自動的にショックを行うので、みなさんの「ボタンを押す」という心理的な負担を減らしてくれます。市民にとって使いやすいことから今後の普及が期待されます。「いざという時に分からない」では救命できません。ぜひ、全自動型AEDの使い方を今後、講習会などで一緒に学んでいきましょう。 | ![]() 野島講師(特任) | ![]() 中尾教授 |
■論文情報
論 文 名:Differences in the Usability of Fully Automated External Defibrillators between Medical and. Nonmedical Professionals
掲 載 紙:Internal Medicine
著 者:Tsuyoshi Nojima, Takafumi Obara, Takashi Hongo, Tetsuya Yumoto, Hiromichi Naito and Atsunori Nakao
D O I:https://doi.org/10.2169/internalmedicine.4578-24
U R L:https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/64/13/64_4578-24/_article
<詳しい研究内容について>
救命の一歩を軽くする 全自動型AEDがもたらす変化
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)
地域二次救急・災害医療推進講座 講師(特任) 野島 剛
(電話番号)086-235-7427