国立大学法人 岡山大学

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特発性多中心性キャッスルマン病の病態に関わる重要分子を発見!~根治療法確立に向けた大きな一歩~

2025年10月16日

◆発表のポイント

  • 特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD)の一つのタイプであるiMCD-IPLは日本人に多く、全身のリンパ節が腫れや発熱、貧血などを引き起こす原因不明の疾患です。
  • iMCD-IPLでは炎症を引き起こす物質である「IL-6」が増加し、IL-6阻害剤がよく効きますが、病気の仕組みは不明であり、完治につながる治療法はありません。
  • 今回の研究により、iMCDのタイプごとにIL-6を作り出す細胞や、その仕組みが異なることを初めて明らかにし、世界に示しました。

 岡山大学学術研究院保健学域 分子血液病理学の錦織亜沙美助教、西村碧フィリーズ講師、佐藤康晴教授らの研究グループが、特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD)の病態に関わる遺伝子について検証しました。本研究成果は9月11日、「Haematologica」に公開されました。
 iMCDは全身のリンパ節の腫れや発熱、貧血、倦怠感などの症状を引き起こす指定難病です。iMCDは大きくIPLとTAFROの2つのタイプに分けられ、炎症を引き起こすIL-6が増加することが知られていますが、詳しい病気の仕組みは分かっていません。iMCD-IPLは日本人に多いタイプであり、症状をやわらげる治療薬としてIL-6阻害剤が効果的ですが、iMCD-TAFROは、IL-6阻害剤の効果が乏しいことが知られています。IL-6阻害剤は対症療法であり、病気を完治させる治療法は未だないため、薬による治療を生涯続けなければならない点が問題となっています。
 本研究では、iMCD患者さんの遺伝子やたんぱく質の発現を詳しく調べ、iMCDのタイプごとにIL-6をつくる細胞が異なることを明らかにしました。さらに、iMCD-IPLにおいて特定の遺伝子が活発に働くことでIL-6が過剰につくられることも明らかにしました。
 本研究の成果は、iMCDの病態解明を大きく進めるとともに、将来的には根治療法の確立にもつながることが期待されます。

◆研究者からひとこと

iMCDは未だ不明な点が多い疾患ですが、本研究の内容をきっかけとして、病態についての理解を深めていきたいと思います。将来的には根治療法の確立につなげ、本疾患で苦しむ患者さんに還元したいです。
錦織 亜沙美助教

■論文情報
論 文 名:Distinct interleukin-6 production in IPL and TAFRO subtypes of idiopathic multicentric Castleman disease
掲 載 紙:Haematologica
著  者:Nishikori A, Nishimura MF, Nishimura Y, Yamada R, Haratake T, Ennishi D, Chijimatsu R, Ito T, Koga T, Ochi S, Kawahara Y, Ueta H, Takeda Y, Gonzalez MV, Fajgenbaum DC, Van Rhee F, Momose S, Sato Y.
D O I:10.3324/haematol.2025.288147.
U R L:https://haematologica.org/article/view/12273

■研究資金
 本研究は、日本学術振興会(JP23K1447605、JP24KK0172、JP25K02476)、厚生労働省(JPMH 23FC1025)、寺岡記念育英会および黒住医学研究振興財団の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
特発性多中心性キャッスルマン病の病態に関わる重要分子を発見!~根治療法確立に向けた大きな一歩~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院保健学域 分子血液病理学
助教 錦織 亜沙美
(電話番号)086-235-7424

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