国立大学法人 岡山大学

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イネの節で鉄を細胞外に排出する新奇輸送体を発見!鉄の過不足を解消し、環境変動に強い作物に期待

2025年11月14日

◆発表のポイント

  • イネのタンパク質IET1は、これまでほとんど見つかっていなかった、細胞内から細胞外に二価鉄イオンを排出する輸送体です。
  • IET1は主に節の分散維管束の導管の周辺の細胞に発現します。IET1は、この導管に節内で維管束間輸送された鉄を再度積み込むことで、新しい葉や穂への鉄の分配に重要な働きをします。

 岡山大学学術研究院先鋭研究領域(資源植物科学研究所)の馬建鋒教授らの研究グループ、学術研究院教育研究マネジメント領域(自然生命科学研究支援センター:ゲノム・プロテオーム解析部門)の宮地孝明研究教授らの研究グループは、中国科学院南京土壌研究所の車景研究員らの研究グループと共同で、イネの節で発現し、二価鉄イオンを細胞の外に排出する輸送体タンパク質IET1(Iron Efflux Transporter 1)を発見し、植物体内での鉄の分配に不可欠な新たなメカニズムを解明しました。これらの研究成果は11月12日、英国の総合学術誌「Nature Communications」に掲載されました。
 鉄は植物にも動物にも生きていくために欠かせない微量必須元素です。鉄は土壌中に広く分布していますが、環境条件(土壌のpHや酸化還元状態など)によって水に溶ける量が極端に変化するため、植物は土壌から鉄を獲得し、体内で過不足なく分配するためのさまざまな仕組みを発達させています。IET1はイネの節で維管束間輸送された鉄を、新葉や穂へと続く分散維管束の導管に再度積み込む役割を担っていることが分かりました。このような研究を通じてイネや他の植物の環境適応能力をより良く理解し、持続可能な農業生産に貢献することが期待されます。

◆研究者からひとこと

 この研究は車景博士が岡山大学資源植物科学研究所の植物ストレス学グループに所属していた頃に始めたもので、車博士が南京土壌研究所に転出した後も、本学で引き続き前例のない輸送体の機能や役割を解明するために5年以上の時間がかかりました。右の写真は今年7月、ポルトガルのポルトで開催された国際植物栄養学会議にて撮影したものです。
車景研究員と馬建鋒教授

■論文情報
論 文 名:A node-localized efflux transporter for loading iron to developing tissues in rice.
邦題名 「成長組織への鉄の分配に働くイネ節の鉄排出輸送体」

掲 載 誌:Nature Communications
著  者:Jing Che, Sheng Huang, Yuting Qu, Yuma Yoshioka, Chiyuri Tomita, Takaaki
Miyaji, Zhenyang Liu, Renfang Shen, Naoki Yamaji, and Jian Feng Ma

D O I:10.1038/s41467-025-64863-4
U R L:https://www.nature.com/articles/s41467-025-64863-4


■研究資金
 本研究は、主に独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(基盤S・21H05034 研究代表:馬建鋒)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
イネの節で鉄を細胞外に排出する新奇輸送体を発見!鉄の過不足を解消し、環境変動に強い作物に期待


<お問い合わせ>
岡山大学資源植物科学研究所
教授 馬 建鋒
(電話番号)086-434-1209

年度