◆発表のポイント
- 植物発酵エキスは人工胃液と人工腸液中でマイクロプラスチック*1と結合することが分かりました。
- 植物発酵エキスは人工腸液中よりも人工胃液中でマイクロプラスチックと高い結合率を示しました。植物発酵エキスに含まれる物質がマイクロプラスチックとイオン相互*2作用で結合することが推測されました。
- 植物発酵エキスが消化管からマイクロプラスチックの排除を促進し、腸から体内への吸収リスクを低減することが期待されます。
岡山大学学術研究院先鋭研究領域(資源植物科学研究所)の杉本学准教授と株式会社機能性食品開発研究所の村上允唯研究開発室長、大林真帆研究員、村上欽俊旧研究開発室長は、植物発酵エキスが人工胃液や人工腸液中でマイクロプラスチックと結合する事を見出し、消化管からマイクロプラスチックを排除できる可能性を明らかにしました。この研究成果は、2025年8月13日に食品科学研究雑誌「Current Nutrition and Food Science」のResearch Articleとして掲載されました。
マイクロプラスチックは人体に取り込まれる可能性が指摘されており、血栓形成促進や臓器不全の誘発等健康への悪影響が懸念されています。今回、植物発酵エキスを人工胃液や人工腸液中でマイクロプラスチックと混合したところ有意に結合し、また人工胃液中(酸性)では人工腸液中(中性)よりも高い結合を示したことから、植物発酵エキスに含まれる物質が酸性条件下で荷電してマイクロプラスチックとイオン相互作用により結合することが考えられます。
本研究成果により、植物発酵エキスが消化管からマイクロプラスチックの排除を促進し、腸から体内への吸収リスクを低減することが期待されます。
◆研究者からひとこと
| 発酵食品による免疫力向上効果は、腸内で増えた善玉菌が生産する短鎖脂肪酸が免疫グロブリンの働きを助け、免疫の過剰反応を制御するTreg細胞を増やすなど、その機能が徐々に明らかにされています。本研究成果により、植物発酵エキスに含まれるマイクロプラスチックを体内から排除する物質が解明される手がかりになると期待しています。 | ![]() 杉本准教授 |
■論文情報
論文名:Potential of Fermented Plant Extract for Removing Microplastics in Artificial Gastric and Intestinal Juices
掲載紙:Current Nutrition and Food Science
著者:Manabu Sugimoto, Nobutada Murakami, Maho Obayashi, Tadatoshi Murakami
DOI:https://doi.org/10.2174/0115734013404286250806063403
URL:https://www.eurekaselect.com/article/150055
<詳しい研究内容について>
植物発酵エキスがマイクロプラスチックを体外へ排除する可能性を確認
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院先鋭研究領域(資源植物科学研究所)
准教授 杉本 学
(電話番号)086-434-1253
(FAX)086-434-1253
